カテゴリー: 上海情報

春節休暇に関するお知らせ

平素より大変お世話になっております。

シノケン不動産では下記の日程で春節休暇を頂きます。

ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご容赦頂きますようお願い申し上げます。

 

春節休暇 : 2011 年 2 月 1 日 午後 ~ 2011 年 2 月 8 日

通常営業 : 2011 年 2 月 9 日 ~

 

以上何卒よろしくお願いいたします。

雑誌【不動産鑑定1月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

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芝田 優巳(しばた ゆうじ)
(株)シノケングループ 経営企画部 海外事業室課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産(株)でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、(株)シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問合せ・感想・取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問合せなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください。
上海通信1月号記事
上海ディズニーランドがついに着工
米ウォルト・ディズニー社との協力協定締結
昨年の11月、米ウォルト・ディズニー社(以下、「ディズニー社」と言います)と、上海ディズニーランドプロジェクトの開発・運営管理を行う上海申迪(集団)有限公司が協力協定を締結しました。これにより、上海ディズニーランドプロジェクトによる基本的な交渉は終了し、本格的に建設が始まることになりました。
世界最大のテーマパーク建設に関する協定締結を、10月で終了した上海万博後としたのは、万博だけでは終わらず、今後も引き続いて、グローバルな大都市へと躍進する上海を世界にアピールする狙いもあったのかもしれません。
上海ディズニーランドは、中国本土では初めて、アジアで3番目、世界でも6番目のディズニーランドとなります。
上海市は、2011年から始まる「第12次5ケ年計画」のテーマのひとつとして経済構造の転換を掲げています。上海ディズニーランドは、経済構造転換の象徴と言われています。上海ディズニーランドの建設が、経済構造転換の主要目標である、消費と民生重視の低炭素型サービス経済体の育成を強力に推進するものとして期待されています。
また、上海では、虹橋空港周辺総合交通ターミナル開発、上海万博跡地開発と並び、上海ディズニーランド計画地を含めた国際観光リゾート区(中国語で、「上海国際旅遊度暇区」)開発が「第12次5ケ年計画」の重点開発に指定されています。
世界最大を目指す上海ディズニーランド
上海市と浦東新区は、上海ディズニーランド建設費用約245億元を含め、周辺の交通インフラ建設費用も合わせて約1,000億元の資金を投入する予定になっています。
第一期工事は、早ければ2014年にも完了する予定となっています。建設工事予定地は、過去にあった住宅の取り壊しも終わり、整地作業も終わっています。また、第二期・第三期工事予定地の土地も、既に収用されているようです。
2009年11月に、上海市がディズニーランドの建設を認可しましたが、その際、公表されたディズニーランド計画地の面積は、世界でも最も狭い香港ディズニーランドよりも小さいものでした。香港紙の報道によれば、認可した開発面積が香港ディズニーランドより小さかったのは、香港ディズニーランドに対する香港政府への配慮があったとも言われています。
現在では、上海ディズニーランド用地として収容された土地は4平方キロメートルを超え、第三期工事完成時には世界最大のディズニーランドを目指すとも報道されています。香港ディズニーランドが1.26平方キロメートル、パリのユーロディズニーランドが1.95平方キロメートル、東京ディズニーランドでも2.01平方キロメートルですから、いかに大きいかがお分かりいただけると思います。
観光客数は、第一期完成時で1,000万人以上、第三期(全期)完成後では3,000万人以上を見込んでいるようです。
 報道によれば、上海ディズニーランドプロジェクトチームが2001年に米オーランドにあるディズニーランドを視察したそうです。
視察の際、オーランド市政府は1960年代、現地経済を発展させる目的でディズニーランドの建設を決定、5年後には開園し、開園後は、オーランドはまたたく間に、一農業都市から重要観光都市への変貌を遂げたこと、また、就業人口の80%が直接・間接的にディズニーワールドのサービス業に携わり、オーランドの観光収入は、今では、年間100億ドルに達しているということなどが分かったとのことです。プロジェクトチームは、ディズニーランドは小型で手軽なものであってはいけず、大型の施設であってはじめて、来場者が存分に楽しめ、一定規模の経済効果があるものとなる、と結論付けたようです。ちなみに、オーランドのディズニーランドは約122平方キロメートルもあるようです。
 中国国内の13億人という人口の多さは、ディズニー社にとっても大きな魅力であったことでしょう。
加えて、上海を中心とした長江デルタ地区の潜在能力の高さが、上海でのディズニーランド建設を後押ししたのではないかと思います。
 2009年の、中国の1人当たり名目GDPは3,687米ドルでしたが、地域別で見ると、上海がトップの11,563米ドル、浙江省が6,490米ドル、江蘇省が6,475米ドルと、長江デルタ地区に位置している3地域の1人当たりGDPは突出しています。更に、この3地域の人口を合わせると約1億5,000万人となり、日本の総人口数より多いことが分かります。
マカオのカジノ収入が、カジノの本場ラスベガスを上回ったのも、周辺エリア(珠江デルタエリア)の人口の多さと消費意欲の高さがあったからだと考えられます。マカオのカジノビジネスの成功要因のひとつを周辺エリアの人口の多さと消費意欲の高さととらえるならば、上海ディズニーランドが順調にいけば、東京ディズニーランドの観光客数を上回るのも時間の問題でしょう。
上海ディズニーランド建設により注目を集めた川沙
2009年に、上海市が上海ディズニーランドの建設を認可し、ディズニーランド建設がより現実味を帯びてから、ディズニーランドがある川沙というエリアに注目が集まりました、
川沙は、浦東空港からは最も近い(上海市では最も東に位置する)住宅エリアで、上海市の郊外の中での中心街として発展してきたところです。とはいえ、国際都市上海とは思えないほどのローカルチックな街で、今でも、中国の昔ながらの風景を見ることができます。
ディズニーランドの建設認可がおりてから、住宅価格は急上昇し、認可の発表前は12,000~15,000元/㎡であったものが、発表後は、上海の平均住宅価格並みの20,000元/㎡前後まで上昇しました。2010年4月に出された国10条の影響で、価格は落ち着きましたが、1万元台後半/㎡の水準を維持していました。
今回、ディズニー社との協力協定が締結されたことにより、川沙が再び注目を集めました。
地元の仲介業者の話では、電話での問い合わせが倍増し、価格もすぐに1~2,000元/㎡程度上がったとの報道もありましたが、今回は、住宅価格が急激に上がることはなく、すぐに落ち着きました。川沙で住宅を購入する人は、投資目的というよりも、いまだに、地元の人や仕事で当地にやってきた人が多く、このような方達が購入できる不動産価格には限界があること、また、投資目的で購入したいという人がいたとしても、2010年10月に発表された上海政府の新政策(一定期間、購入できる部屋を1部屋に限定するという政策)を考慮し、購入を控えた人が多かったからだと思われます。
一方で、家賃は上昇傾向にあるので、川沙の不動産物件の投資価値は上昇しているとも言えます。
ディズニーランド計画地は、浦東空港から車で15分程度、市中心部からは4~50分程度のところに位置しています。また、開園までには、地下鉄11号線がディズニーランドまで延伸する計画がありますので、アクセスも比較的良いのではないかと思います。
上海市政府は、計画地選定にあたっては、浦東空港から大型バスで10分程度で移動できる場所を条件としてあげているという報道もありましたので、上海市政府が概ね意図していた場所を選定できたということになります。
第一期工事は、黄楼鎮旗杆村というところにある「川沙A―1地」で、面積は1.16平方キロメートルあります。先日、第一期工事が行われる計画地を視察してきましたが、現在、既に工事が進められており、大型トラックが計画地を頻繁に行き来していました。まだ何もないだだっ広いだけの土地に見えるこの土地にディズニーランドができるのかと思うと何とも不思議な気分になりました。
第一期工事の目玉は「水」となる予定で、面積が0.39平方キロメートル、周囲の長さが約5.5キロメートルの「湖」が建設されると報道されています。
川沙という地名からも想像いただけるように、計画地内にも、川が多く流れています。自然の少ない上海では、川や海、山や公園などの自然が、貴重な資源として重宝されます。住宅開発においても、川沿いに建てられるマンションは非常に人気があります。この貴重な資源を生かしてディズニーランドを開発すれば、中国人の心をとらえる素晴らしいモノができあがるのではないでしょうか?
上海ディズニーランド建設により注目を集めた業態
 
 ディズニー社との協力協定が締結されたことにより、再び注目を集めたのは、川沙の不動産ばかりではありません。
報道では、上海ディズニーランドの建設は約100社の上場企業に恩恵をもたらすと言われています。
 上海証券のアナリストは、契約締結段階では土地、インフラ整備、観光業、建設期は商業・小売、飲食、観光、交通、開園時には印刷、メディア、特許商品などの分野が恩恵を受けることになると予想しています。
ディズニーランドを成功させるためには、周辺のインフラ整備やホテル・商業施設の整備は欠かせないでしょう。したがい、これら関連業界への波及効果は計り知れないと思います。
現状でも、川沙エリアは、ひとつの物流拠点となっており、高架路を使えば、上海市内への移動は比較的便利とも言えますが、高架路や大きい通りを除けば、狭くまだ整備されていない道も多く残ります。上海万博開幕までに、万博会場周辺の道路整備が急ピッチで行われたように、ディズニーランド開園までには、ディズニーランド周辺の道路関連の整備が進み、交通の近代化が進むものと思われます。
商業施設については、川沙に国際レベルの商業施設が少ないため、施設を作るだけでなく、どうサービスを提供し、地域にどう溶け込んでいくかが大きな課題だと思われます。川沙で目をひく最新大型商業施設は、2010年6月に駅近くにオープンしたMax Mall(緑地東海岸)くらいです。Max Mallは、上海の大手デベロッパーである緑地集団が上海の各地に展開している複合商業施設です。川沙のMax Mallにも、オフィスビル2棟に映画館、各種商業施設のほか、国際的なホテルであるハワードジョンソン(HowardJohnson)があります。先日取材に訪れた日は、川沙の中心部にあるローカル商業店舗街のにぎやかさとは裏腹に、休日でもあるにもかかわらず、人はまばらでした。これは、駅から近いとは言っても、川沙のローカル商業店舗が集まる中心部から離れていることだけではなく、現状では、Max Mallのような最新大型商業施設が受け入れられる土壌が、川沙では育っていないことも原因のひとつなのではないでしょうか?
上海万博開幕までにも、万博会場周辺を中心に、観光客を受け入れるためのホテルが林立しました。ディズニーランド周辺でも、今後、急ピッチで、国内外の観光客を受け入れるホテルが建てられていくと思われます。万博会場周辺に建てられたホテルは、あくまでも、万博に来る観光客を受け入れるために建てた臨時宿泊施設的な側面もあり、万博後は稼働率も低下していますが、ディズニーランドが開園すれば、ホテル業界も再び活性化するのではないかと思われます。
現在の川沙エリアには、バジェットホテル(中国語では、「経済型酒店」)が多く見受けられます。代表的なものに、「錦江之星(Jinjiang Inn)」「如家快捷酒店(Home In」「漢庭連鎖酒店(Hanting Hotel)」「Motel168」「速8(Super8)」があります。これらのバジェットホテルは、都心中心部よりも、中心部の周辺や郊外で多く展開されています。部屋はこぎれいにし、コンパクトで余分なモノは排除しており、1泊200~350元(2,500~4,000円)程度です。上海では、安いホテル・旅館であれば1泊100元(1,250円)前後のもあるので、そこから見ればやや高いのですが、4ツ星、5ツ星ホテルから見れば値段は格安で、ビジネスマンなどに非常に人気があり、ここ4、5年で急成長しています。急成長したホテルチェーンの特徴は、どの会社もブランド力と資金力を併せ持っていることです。Motel168は、モルガンスタンレーが出資しており、既存の工場や倉庫をリノベーションしてホテル仕様にするというビジネスモデルで、またたく間に全国に店舗を増やしていきました。
道路などインフラも整備され、国際レベルのホテル・商業施設が建てられるようになれば、今後、必然的に周辺の地価は上昇していくことになると思われます。ディズニーランドが開園すれば、ディズニーランド関連で新たに就業すると言われる約13万人を受け入れるための住宅も必要になります。就業者は、地元の人に限らないでしょうから、これまでよりも品質の高い住宅を供給する必要になってくると思われます。そうなれば、川沙の平均住宅価格や住宅家賃も上昇することが予想されます。
上海ディズニーランドに期待すること
上海では20年ほど前に、中国版「ユニバーサル・スタジオ(環球楽園)」「アメリカンドリーム(美国夢幻楽園)」が前後して開園し、開業当初はにぎわったそうなのですが、中国市場に馴染めずいずれも失敗に終わったという苦い経験があります。
ディズニーランドが成功するかは、中国市場に馴染み、いかに中国人の心をとらえたものを作れるかがカギと言えそうです。
上海万博の開催は、上海に、交通インフラの整備(特に、地下鉄網の発達)とともに、マナーの改善などに大きく貢献しました。私が2004年に上海を初めて訪れた際には、中国人のマナーの悪さに唖然としました。今では日本でも当たり前になった、エスカレーターの(東京では)左側に立つというマナーも、この国では何十年先になるのだろうかと感じました(私は、大学の卒業旅行でアメリカに行き、その際、エスカレーターの端に寄って立っているアメリカ人を見て、日本はまだ遅れているなと感じました。それから、日本人が、エスカレーターの端に立つようになるまで10年かかりました)。上海万博期間中に、エレベーターでは右側に立つようにというマナー向上運動が行われた結果、混雑時を除けば、市中心部では、エスカレーターの右側に立つようになるなど、マナーが向上しました。
専門家によると、上海ディズニーランドの開業が上海市の観光業にもたらす寄与度は10%以上、上海市の域内総生産(GDP)への寄与度は1%強に達するそうです。

ディズニーランド建設が、上海に大きな経済効果をもたらすことのみならず、サービスの向上や、文化レベルの向上に大きく寄与することを願ってやみません。

 

雑誌【不動産鑑定11月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

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㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、 y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください)

 

 

上海通信11月号記事

上海発展のカギを握る副都心計画
上海市の副都心構想 
上海市は、あくまでも「市」であるため、日本の感覚では、たいして大きくないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、中国でいう「市」は、日本の都道府県にあたります。上海の面積は6,340平方キロメートルで東京の約2.6倍、人口は約2,000万人です。東京の人口は約1,300万人ですから、上海は、人口でも東京を大きく上回ります。
上海の人口分布図を見ると、中心部に偏っており、都市機能を分散させると共に、人口を郊外に分散させるという政策が採られています。
上海市全体都市計画(1999年~2020年)でも、上海市政府がある人民広場(地名です)を中心に、4つの副都心を建設する構想が盛り込まれています。
4つの副都心は、上海のへそとも言える人民広場を中心に、ほぼ四方に分布します。
副都心は、徐家匯(人民広場の南西)、五角場(人民広場の北東)、浦東花木(人民広場の南東)、真如(人民広場の北西)の4つです。
それぞれの計画規模は、徐家匯が約2.2平方キロメートル、五角場が約2.2平方キロメートル、浦東花木が約2.0平方キロメートル、真如が約1.6平方キロメートルです。
4つのエリアは、計画の発表前は、単なる上海の郊外でしかありませんでした。
今回は、今後の上海発展のカギを握るとも言える、4つの副都心についてご紹介させていただきたいと思います。
副都心として最初に開発が進んだ徐家匯
徐家匯は、『トータルサービスの行き届いた、現代都市』というコンセプトの下、4つの副都心の中で最も早く再開発が進められました。現在では、上海市の交通の中枢エリアにもなり、上海の渋谷とも言われるほどに発展し、学生や若い夫婦などを中心に大変な賑わいを見せています。
徐家匯は、90年代までは、低層住宅が密集するエリアでしかなく、上海交通大学(中国有数の名門校)や徐家匯天主堂などのほか目立つ建物はありませんでしたが、現在では、上海を代表する「太平洋百貨」「東方商廈」「美羅城(Metro City)」「港匯広場」「匯金広場」など有名百貨店が集積し、グレードの高いオフィスビル、五ツ星ホテル、娯楽施設、コンピューターショップなどが建てられ、上海有数の繁華街へと変貌を遂げました。
変貌を遂げた徐家匯の象徴とも言えるのが、ハイグレードオフィス「港匯広場(Grand Gateway)」です。
「港匯広場」は、香港系大手デベロッパーである恒隆集団(Hang Lung Group Ltd.)が建設したものです。
恒隆集団は、上海で最も有名なオフィスビルのひとつで、高級ショッピングロード南京西路のランドマーク的な建物である「恒隆広場(Plaza66)」を建設したデベロッパーです。恒隆集団が副都心計画に加わったことが、徐家匯をここまで成長させた要因のひとつになっているとも言えると思います。
徐家匯エリアには、大学生や外国人留学生のほか、日本人をはじめ多くの外資系企業の駐在員が住んでおり、現地の日本人にもなじみの深いエリアになっています。
前述した美羅城の地下1階に、既存の商業施設をリニューアルし,日系のショップを集めた「五番街」が今年の8月にオープンしました。日系以外のショップもありますが、「無印良品」、雑貨店「フランフラン」、ベーカリー「ドンク」、抹茶カフェ「ナナズ・グリーンティーカフェ」、ドラッグストア「セガミ」、下着専門店「ピーチ・ジョン」、ソフトクリームスタンド「神戸六甲牧場」、「日比谷花壇」、など、日系のショップも多く入居しています。
テナントには、中国初進出の日系ショップも多いのが特徴です。徐家匯は、既に成熟し、上海を代表するエリアとなっており、テナントから見れば、初進出するなら出店して間違いのないエリアとして認識されているのでしょう。
弊社の顧客の中にも「五番街」に出店したいという方が何社かいらっしゃり、オーナー(デベロッパー)とも交渉しましたが、オーナーは、非常に強気でした。というのは、美羅城は、非常に人気のある商業施設で、既存入居テナントのうちピザハットやスターバックスは美羅城店が世界で最も売上が高い店舗となっていると言われるほど集客力があるからです。オーナーサイドは、初進出よりも実績のあるテナントを求めていたため、今回中国へ初進出を果たした店舗はオーナーとの交渉は大変だったことと思います。こういうケースでは、要求される賃料も高くなりがちですが、上海で最初からこのような一等地に進出できるチャンスは非常に稀であり、かつ、1店舗目の店舗が美羅城にあることをアピールすることで2店舗目を他のエリアに出店するときの出店交渉が容易になる、という事情を理解して高い賃料を払う決断ができるかどうかが入居できるかどうかの最大のポイントになります。
先日も五番街に行きましたが、入居店舗のうちでは、「ナナズ・グリーンティーカフェ」に行列ができており、特に客が多かったのが印象的でした。同社は、「抹茶」という切り口から、誇りある日本の食文化や伝統を「日本のカフェ」として世代や国を超えて多くの人々に発信し続ける ― と考えられているようです。ここ中国ではお茶好きの人が多く、数十種類のお茶が飲める台湾系の喫茶店「一茶一座」が大人気なので、日本の抹茶も上海の人には受け入れられやすかったのでしょう。
商業施設の規模では徐家匯を超えるほどに成長した五角場
五角場は、ロータリーを中心に5本の大きな道路が走る交通の要所であり、同済大学、復旦大学、財経大学など中国でも有名な大学が集積している文化教育エリアでもあります。
こうした特性を活かし、上海市内の中央ビジネス機能のうち、知識創造型ビジネスを同エリアに分散させるなどの特色のある都市造りをコンセプトに五角場の開発が進められました。
五角場は、今でこそ地下鉄(10号線)も開通し、都心部へのアクセスも改善されたものの、かつては交通の便が悪く、エリア内には、低層住宅や中低レベルの商業施設・オフィスビルしかありませんでした。
五角場の開発は、徐家匯の再開発から遅れていたものの、五角場の中心を走る中環状線を覆うシンボリックな卵型のドームが完成した後、急ピッチで開発が進められ、2006年12月に総建築面積約33.5万平方メートルの「万達商業広場(Wanda Plaza)」が、2007年1月には総建築面積約12.6万平方メートルの「百聯又一城購物中心(Bailian You Yi Cheng Gouwu Zhongxin)」がオープンしました。「万達」は大連、「百聯」は上海の商業店舗関連企業のトップ企業であり、この2社が店舗をオープンさせたことで、五角場が、副都心のひとつとして開発が進められていることを市民に大きく印象付けました。
「万達商業広場」は、単体の商業施設としては上海市内最大規模を誇り、ウオールマート、巴黎春天(香港系百貨店)、HOLA家居(台湾系家具チェーン)、新華書城(中国系大型書店)、万達国際影城(映画館)、市内最大の宝石専門店「黄金珠宝城」などが入居しています。日系企業では、山崎パン、吉野家、味千ラーメン、サイゼリヤなどが出店しています。
「百聯又一城購物中心」は、若者向けの巨大ショッピングモールで、カジュアル衣料品やスポーツ用品店など、約500店舗が入居し、7階にある上海最大のアイススケートリンクが目玉施設となっています。
知識創造型ビジネスを創出することが副都心化計画のコンセプトとして掲げられていましたが、「創智天地」と呼ばれるベンチャー企業を誘致するエリアも設けられるなど、ビジネスエリアも充実しました。「創智天地」の裏手には1935年に建築された「上海市体育場(通称:江湾体育場)」があります。江湾体育場は、2005年に復元され、一般公開されています。五角場は、1930年代に計画された「大上海プロジェクト」においては、市の中心となる予定で、この江湾体育場は、上海を代表する体育設備として位置づけられ建築されました。戦時中は、旧日本軍の爆弾庫として使われたこともあったそうです。
また、五角場の背後(北方)には、新江湾というエリアがあります。このエリアは、五角場エリアの開発と共に、数年前より高級住宅エリアとして開発が急ピッチで進められました。住宅用地の入札には、外資系・中国系の大手不動産デベロッパーがこぞって参加し、土地の価格も急騰し、一時期は、「パンより小麦粉の方が高い(マンションなど住宅売買単価よりも土地売買単価の方が高い)」エリアとしてよく報道されていました。
浦東地区で唯一の副都心花木
上海は、黄浦江を挟み、西側を浦西、東側を浦東と呼びますが、花木は、副都心の中では唯一浦東に位置します。
花木というエリアは狭義では花木鎮のことを指し、上海で最大の公園である世紀公園(Century Park。総面積は、約140ヘクタール)の南に位置します。花木エリアの副都心計画は、狭義の花木エリアと世紀公園周辺エリアを一体化して副都心とする計画となっています。
花木エリアの最大の特徴は、自然環境が少ない上海において、緑豊かで市民の憩いの場となっている世紀公園があることです。この公園周辺には外国人や中国の企業幹部などが多く住む高級住宅が建ち並ぶ、品のあるエリアとなっています。また、上海の中心部を東西に走り、虹橋空港と浦東空港を結ぶ、上海の大動脈とも言える地下鉄2号線が通っているため交通アクセスが非常に良く、上海の金融の中心である陸家嘴まで近いという優位性もあります。
既に、世紀公園北側には、聯洋地区と呼ばれる外国人が多く住む国際的な居住区ができあがっています。
また、世紀公園の西側には、日本人も多く住む新興住宅エリアがあり、日本人学校浦東校もあります。上海には約5万人の日本人がおり、世界でもっとも日本人が多く住む海外の都市となっています(来春、世界で初めて日本人学校高校部が開校されることも発表されています)。数年前までは、日本人学校が浦西地区にしかなかったため、お子様をお持ちの方々は、お子様の学校への通学を考慮し、浦西地区に住む方も多かったのですが、浦東地区にも学校ができたことで、お子様をお持ちの方の選択肢が広がり、浦東地区に住まれる方も増えました。浦東校の隣には、日本人向けサービスアパートもでき、周辺には日系の飲食店舗などもできるなど、日本人にとってはますます便利なエリアになっています。
狭義の花木エリアである花木鎮は、かつては農村部の中心鎮で、花木エリアの副都心計画エリアの中においては、開発が遅れていました。
以前は、花木鎮の周辺(世紀公園の南側)で目立った建物というと、国際博覧中心(国際会議場)くらいしかありませんでしたが、ここ数年、国際博覧中心周辺の開発が急ピッチで進みました。今年に入り、地下鉄7号線が国際博覧中心まで延伸し、ホテル、オフィス、ショッピングモールなどの開発が進められており(一部は既に竣工)、今後は、浦東を代表する一大商業エリアとなる予定です。
国際博覧中心周辺でもっとも大きな開発は、浦東ケリーセンターです。
浦東ケリーセンターは、総建築面積23万平方メートルの複合施設で、5ツ星ホテル、オフィスビル、サービスアパートやショッピングモールのほか、メガ・スポーツクラブや子供向けの「アドベンチャーゾーン」などが設置される予定です。
5ツ星ホテルは、シャングリラホテルズ&リゾーツが運営する「ケリーセンターホテル浦東」です。同グループにとっては、「シャングリラ上海」に続く上海での2軒目のホテルになります。ホテルは、総客室数が574室あり、上海環球金融中心(Shanghai World FinancialCenter)を設計したコーン・ペダーセン・フォックス・アソシエイツ社(Kohn Pedersen Fox Associates PC)と香港系のアエダス社(AedasLtd.)が設計を担当しました。
上海万博前のオープンを目指していましたが、まだ正式オープンはされていません。
最も開発が遅れている真如
 
真如は、既にご紹介させていただいた3つの副都心と比べると、全くと言って良いほど、副都心化するための開発が進んでいないエリアです。都市計画案が上海市政府から批准されたのも2007年のことです。
真如も、花木と同様に、かつては農村部の中心鎮でした。
真如は、真如寺と、上海の代表的な水産市場である「銅川水産市場」があることで有名ですが、それ以外に特別目立ったものはなく、グレードの高いオフィスビルやマンションも現状では見当たりません。副都心として指定されていなければ、市中心部へのアクセスが比較的良いだけのひとつの郊外エリアにすぎません。
副都心のひとつとして指定された最大の理由は、上海市内の北西部の中では唯一、将来の交通の要所になり得るというポテンシャルを評価されたからです。
真如エリア周辺は、陸上交通の拠点としてはもともと優れた立地でした。上海-南京間など、上海と周辺都市を結ぶ2本の高速道路があるほか、204、312という2つの国道もあり、加えて、市中心部を囲むようにして走る高架路「内環状線」「中環線」「外環線」へのアクセスも非常に良い場所にあります。この優位性を活かしつつ、鉄道のアクセスを改善することができれば、上海市と上海周辺都市を結ぶ重要拠点となり得、副都心化することができると考えたのです。
計画通り、今年に入り11号線が開通し、市中心部へのアクセスが改善されました。また、地下鉄開通に伴い、地下鉄「上海西」駅から鉄道滬寧線(中国語で、沪宁铁路)「上海西」駅へ乗り換えできるようになりました。滬寧線「上海西」駅は、滬寧線「上海」駅の隣駅であることもあり、3年程前から旅客扱いを休止していましたが、今年になりリニューアルし、旅客扱いを開始しました。再開発により上海西駅がよみがえり、将来は、このエリアの中心的役割を担うことが期待されています。
副都心化するためには、交通アクセスの改善のみでは足りず、他の副都心と同様に、大規模再開発を行う必要があります。真如の大規模開発を担うのが、世界的富豪の李嘉誠(Li Ka Shing)一族が経営する、香港最大の企業集団である長江グループのデベロッパー長江実業(集団)有限公司(英文社名:Cheung Kong (Holdings) Limited)と、長江系のコングロマリット香港最大手企業であるハチソン・ワンポア(英文社名:Hutchison Whampoa Limited)です。
長江グループは、上海で、オフィスビル・商業施設・ビラなど様々な用途で大規模開発を行っていますが、真如での開発は、グループにとっても最大級の開発となります。
長江グループが真如で予定している開発の総建築面積は約114万平方メートルで、300メートル級のオフィスビルを中心に、五ツ星ホテルや住宅など100~150メートルの建物が付近一帯に建てられる計画となっています。全てが竣工するのは2018年を予定しているため、真如が、他の3つの副都心と並んで、名実共に副都心となるにはまだ時間がかかりそうです。
都市計画によれば、他に、真如エリアのシンボルとも言える真如寺は保存されること、銅川水産市場が移転することなどが決まっています。
真如エリアの不動産は、市内の中心部から同距離に位置する他のエリアと比較すると割安感があります。加えて、副都心化計画があり、真如エリアの潜在力は大きいことは明らかであると言って、真如エリアの不動産投資を薦める記事、広告をよく目にしますが、これまでのところ副都心としての開発が進むからという理由で価格が上昇するという明確な動きはありません。しかしながら、開発が進むにつれ、真如エリアの都市力が増し、不動産の市場価値が上がるのはほぼ間違いないのではないかと思われます。
11号線が開通したことにより、「真如」駅の先(嘉定区)も、市中心部への通勤圏内となったため、マンション開発が活発になってきています。前述したように、地下鉄10号線の開通と五角場の副都心化に伴う再開発により、五角場の先にある新江湾というエリアのマンション価格が高騰しましたが、真如の先にある嘉定区のマンション価格がどう推移していくのかも注目に値するところです。
上海の4つの副都心は、それぞれが個性を持ち発展していますが、上海がより発展していくうえで、4つの副都心がそれぞれの役割を果たすことが不可欠であると思えます。4つの副都心が機能すれば、市内中心部と副都心、郊外とが有効に結び付けられ、都市としての厚みを増していくことと思われます。

『 全国賃貸住宅新聞 』に当社関連記事が掲載されています!!

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中国人投資家向け不動産販売事業に着手 旅行会社と提携し確度の高い集客見込む
 「月に一回程度は中国に出張します。本社のある福岡と、現地法人のある上海までは飛行機でおよそ一時間半。東京に行くのと同じか、それよりも身近な感覚で、思いたったらすぐに飛び立ちます」とシノケングループ(福岡県福岡市)の篠原英明社長は中国の可能性に注目し、事業展開に熱を入れる。必要とあればすぐに渡航できるように、パスポートを常に持ち歩いている。
 日本に常駐スタッフを置き、中国人向けに物件の販売を行う同社だが、中国との縁は1998年にまでさかのぼる。シノケンの主力事業である投資用アパートに置く住宅設備の生産拠点を求めたのがきっかけだった。その後、不動産価格の上昇を受け中国不動産への投資がブームとなった2006年に香港企業に出資するなど、資本出資を通じて中国で足固めを行う。
 その後、2009年には上海の不動産会社を100%子会社化。上海のメーン通り沿いのビルに店舗を構え、中国人投資家に日本の不動産仲介事業を開始した。
 生産拠点としての足場固めが第一、日本人富裕層への中国不動産紹介が第二の波とすれば、同社の対中ビジネスは第三フェーズに入ったといえるだろう。中国の経済成長による富裕層の増加と国内のバブルに対するリスクヘッジの要請を背景にした日本の不動産投資ブームだ。今年8月には中国上海の旅行会社と業務提携し、中国人富裕層向けに日本の不動産を仲介する旅行ツアーなどの事業を開始すると発表し、業界を賑わせた。篠原社長は、中国人投資家向けに日本の不動産販売事業を立ち上げるにあたり、手探りで準備を進めてきたことを明かす。
 「モデルケースとして1年間、中国に住む中国人に日本の物件を買ってもらい、取得から売却までの一連の流れに必要な手続きを確認しました」
 中国人が日本の物件を取得した場合の登記、税務処理、売却時の手続きなど、一連の業務を通して行ったことでノウハウを身につけることができたという。
 今後は、業務提携した上海の旅行会社と連携し、中国人富裕層への日本の不動産紹介業を本格化していく。来日前に中国現地で各個人の予算などをリサーチし、日本に来た時に紹介する物件の種類や規模を絞り込む。現状では、日本で紹介する物件は自社の開発物件ではなく、一般に流通している売買物件の紹介が中心だという。今年の販売目標は売上高5億円以上だ。
 目先の不動産販売だけではない。篠原社長は、優秀な人材を発掘する場としても中国に期待している。
 「今は、語学力を含めて優秀な中国の人材を発掘するチャンス。不動産販売の規模拡大に合わせて、中国現地で採用し、日本で勤務する人材を増やすことも検討しています」
 足元では、主力事業の投資用新築アパートの業績が好調。不況のあおりを受けて年金や将来に不安を抱くサラリーマンからの需要を受け、今年12月期第2四半期連結会計期の業績では、2月に公表した売り上げ計画70億円を大幅に上回る87億1200万円を達成した。販売計画も164戸に対し、216戸と堅調に推移している。
 好調なメーン事業で底堅さを見せる同社。中国ビジネスも主力事業として台頭させることが出来るか、篠原社長の挑戦は続く。

 

国慶節期間の休業のお知らせ

平素よりご愛顧頂きまして誠にありがとうございます。

国慶節の期間中(10月1日~7日)は、誠に勝手ながら休業とさせて頂きます。

なお、9日(土)は通常営業致します。

何卒ご了承頂きますよう宜しくお願い申し上げます。

雑誌【不動産鑑定10月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

芝田 優巳(しばた ゆうじ)
(株)シノケングループ 経営企画部 海外事業室課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産(株)でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、(株)シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問合せ・感想・取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問合せなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください。
上海通信10月号記事
未来都市(エコシティー)構想があるエリア
常に未来ビジョンを掲げる中国 
中国を例える際に、かつては、よく「世界の工場」とも言われていましたが、最近では、「世界の消費市場」などとも言われるようになっています。
中国は、未来を見据え、常にビジョンを描きながら発展してきています。中国の発展スピードは、世界の先進諸国と比べても非常に速いので、過去の中国から現在の中国の姿を把握するのではなく、未来の中国を見据えながら現在の中国を把握するという視点も重要になってくると思います。
今回は、かつて「世界の工場」と呼ばれた中国とはかけ離れた、エコシティーを目指すエリアについて紹介させていただきます。これまでにあまり想像できなかった方にとっては、中国の未来像から、現在の中国の都市をとらえる良い機会となるかもしれません。
未来の理想都市を目指す張江ハイテクパーク
 
現在開催されている上海万博のテーマである「Better City Better Life」という理念をいち早く取り入れ、実現を目指しているエリアがあります。張江高科技園区(Zhangjiang Gaoke Hightechnology Park。以下、張江ハイテクパークといいます。)というエリアです。
張江ハイテクパークは、1992年、環球金融中心(森ビルが開発した101階建てのオフィスビル)がある陸家嘴金融貿易区の東南(地下鉄2号線「陸家嘴」駅から、「張江高科」駅まで約15分)に創設された国家級ハイテクパークで、上海のシリコンバレーと呼ばれています。駅を中心に企業の研究所などが集まり、歩道には緑地が整備された広い道路に沿って近未来的な建物が建てられており、外観上も、シリコンバレーと呼ぶにふさわしいものです。張江ハイテクパークは、中国で最初にして最大の経済特区である浦東新区内にあり、浦東新区の4大重点開発エリアのひとつとなっています。
張江ハイテクパークでは、IC(集積回路)、バイオ医薬(バイオテクノロジーを駆使して製造する医薬品)、ソフトウエアが主産業と位置づけられています。エリア内には5,000以上の企業が進出し、就業者数は、約13万人にものぼります。
張江ハイテクパークは、25平方キロメートルという広大な敷地があり、ハイテク産業エリア、技術イノベーションエリア、科学研究教育エリア、生活エリアなど、機能別に区画されています。
また、企業の研究機関や大学を単に集積させるだけでなく、「産・学・研」を一体化し、最先端技術の発展基地を目指しているのにも特徴があります。張江ハイテクパーク内には、北京大学上海マイクロ電子研究院、精華大学情報学院上海マクロ電子センター、復旦大学国家モデルソフトウエア学院、復旦大学(張江)マイクロ電子研究院、中国医薬大学などが進出しています。
中国では、道路に名前が付けられていますが、張江ハイテクパーク内には、アインシュタイン通り(Aidisheng Road。中国語で愛迪生路)、ニュートン通り(Niudun Road。中国語で牛頓路)、ダーウィン通り(Daerwen Road。中国語で達尔文路)、キューリー通り(Juli Road。中国語で居里路)など、国内外で功績のあった著名な科学者の名前が付けられた通りも少なくありません。張江ハイテクパークからも、歴史に残る科学者(技術者)が誕生してもらいたいという政府の願いが込められているのだと思います。
転機となったIBMの進出
 
張江ハイテクパークには、世界を代表する企業が多数進出しています。
数年前でさえも、張江ハイテクパークはすでに15年以上の歴史を誇り、GE、マイクロソフト、ロッシュ、モトローラ、シンドラー、ハネウェルなどの欧米企業のほか、ソニー、松下、キリンビール、味の素、第一三共、資生堂などの日系企業や、中国最大のインターネットビジネスのプラットフォームである阿里巴巴(アリババ)が進出していました。
2008年に、IBMが、上海中心部にあった拠点を張江ハイテクパーク内に移転しましたが、このことは、張江ハイテクパークをさらに発展(進化)させる大きなきかっけとなりました。
移転前のIBMの拠点は、5~6,000平方メートル程度しかなく、すでに手狭となっていました。
IBMにとっても、中国は重大な戦略拠点で、将来、事業を拡大させることを前提に、移転先を探す必要がありました。上海中心部ではまとまった面積を確保することが困難であったため、必然的に、張江ハイテクパークなど、市中心部より少し離れた郊外を移転先の有力候補として検討することになりました。
IBMは、国家級ハイテクパークであり、国際的企業も多数進出する張江ハイテクパークに注目しましたが、同社は、交通インフラや商業施設の整備、ビジネス環境に物足りなさを感じ、張江ハイテクパークを管理する張江集団や浦東新区政府などに対し、これらの環境の更なる改善を要求しました。浦東新区政府などは、IBMの要求に応じることを約束し、IBMは、移転の決断をしました。張江集団のトップ(副社長)は感激し、「IBMが張江ハイテクパークに進出することは、我々にとって大きなチャンスでもあると同時に、大きな挑戦でもある」と発表し、これ以来、張江ハイテクパークの更なる発展が始まりました。
張江ハイテクパークの新しい発展戦略
張江ハイテクパークは、IBMに要求された項目を整備すること以外に、他のハイテクパークとの差別化を図るために、急速に“低炭素化”を進めることにしました。
張江ハイテクパークを訪れると、上海とは思えないほど緑が多く、空気も良く、涼しげな印象を受けます。街は整備され、道路は広く、歩道にはきれいに緑地帯が設けられており、照明灯はすべてLED灯が採用されるなど、“低炭素化”の試みを随所に見ることができます。
張江ハイテクパークが、環境保護、資源循環経済、清潔生産を提唱し、ハイテクパーク内の緑化や公共施設の設置、省エネルギー型建設などを進めてきた結果です。
計画では、年内(2010年)までに緑地を770ヘクタールまでに増やし、エリア内の緑化率を30%以上にし、その中に2つの湖、ひとつの主体公園、汚水・雨水の総合処理施設、緑地帯を保護する為のスプリンクラー施設、太陽エネルギー利用施設などを作ることになっています。
また、ハイテクパークでは、優秀な技術者の受入れにも力を入れてきました。
昨年、金融危機による就職難となり、失業者数が増加していた際には、1万戸規模の住宅を技術者に提供するとアナウンスし、優秀な技術者を集めようと試みました。計画では、今年末までに同様の人材マンションを建設し、17,000人の技術者の受入れを目指しています。
張江ハイテクパークが目覚しい発展を見せるなか、数年前から、張江ハイテクパークで働く男性は「張江男」と呼ばれるようになりました。張江男の一般的なイメージは、張江ハイテクパーク内の会社に勤務し、職場までは長時間をかけて通勤し、仕事も忙しい男性です。プライベートな時間が少ないために、ガールフレンドを見つけることもできず、また、異性にもあまり関心がないようにも見られていました。
あまり良い意味で使われることが多くなかった「張江男」も、ここに来て、違った意味で注目されているという記事が新聞に出ていました。記事によると、張江男の多くは、IT業界で働き、高学歴・高収入・高レベルなど四高である為ため、理想の結婚相手として人気が上昇しているというものでした。四高に目を付けた母親たちが「張江高科」駅や社員食堂などで、男性に娘のプロフィールを手渡しするなど、精力的に花婿探しをしているそうです。
低炭素化のシンボルLTRの開業
 
今年に入り、張江ハイテクパークの“低炭素化”を印象付けるニュースがありました。
ハイテクパーク内に、LRT(トランスロール。中国語では張江有軌電車)が開業したというニュースです。開業式には、上海市副市長や運営会社社長、ロール社社長などが出席し、盛大に開業セレモニーが行われました。
LRTの開業は、天津についで中国では2番目になります。LRTは、日本でも2005年に堺濱で開業に向け研究が進んでいましたが、導入には至りませんでした。LRTは、日本人にとってはあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパでは広く運行されている電車です。
LRTは、「張江高科」駅から終点の「金秋路」駅までの全長9.2キロメートルを走行します。走行途中の停留所は15カ所あり、進出企業や研究機関、大学などを通り、ハイテクパーク内を横断します。列車のデザインは斬新で、各停留所にはLEDを使った照明、運行表示板、専用路には優先信号を装備するなど、景観にも環境にも配慮されたものになっています。
列車はフランス製(TRANSLORH3タイプ)で、ゴムタイヤ・ガイド方式が採用されています。このため、レールは1本しかなく、ゴムタイヤで一般道を走ります。最高時速は時速70キロですが、通常は、30~40キロ程度の運転です。実際に乗車してみると、静かで乗り心地は上々です。今年のLRT開業区間は第1期で、今後、第2期、3期と拡張され、最終的には総延長が約30キロメートルになることが予定されています。LRTは、一般車と違い排気ガスがなく騒音も極めて少ないので、新交通システムとして大いに期待されています。
2020年までの発展計画
今年、張江ハイテクパークのトップは、今後は、低炭素産業もハイテクパーク内の一大産業に加え、2020年までにエリア内の低炭素化を加速し、他のハイテクパークのモデル地区となることを高らかに宣言しました。
低炭素化(エコシティー化)は、環境先進国である日本やドイツの協力がなければなしえないことかもしれません。すでに多数が進出している日系企業にとっては、自国の最先端技術を生かす良い機会ともなるのではないでしょうか?
ドイツは、ハイテクパーク内にドイツセンター(German Centre)を設置しています。ドイツセンターには、多くのドイツ企業が入居しており、自社製品を展示しています。なかには、太陽光発電技術などをアピールすべく、環境関連製品もあり、目を引きます。自国の技術を他国に伝えるために、企業間で連携しているドイツの取組は、日系企業も参考にすべきかもしれません。
また、張江ハイテクパーク内には、新たな試みも行われています。
2008年、政府が主導となってアニメ産業の育成を進める一環として、「張江アニメバレー(中国語では、張江動漫谷)」の除幕式が行われました。中国では、国内でアニメ産業を育成する為に、ゴールデンタイムでのテレビ番組に外国製アニメを放映することを禁止していますが、アニメバレーの設立により、今後5~10年かけて、200あまりのアニメ関連産業の育成をハイテクパーク内で目指すというプロジェクトです。
今年の5月には、中国で初めてのアニメ博物館が、張江ハイテクパークの文化産業エリア内にオープンしました。張江アニメバレーの重要な施設として位置づけられ、「アニメの城」を目指して、入場者との相互体験の要素を多く取り入れた博物館となっています。博物館の建設は、5~6年先に浦東新区内にディズニーランドができることになっていることも影響している(「張江高科」駅から、ディズニーランド建設予定地最寄駅である「川沙」駅まで約15分)ようで、博物館内には、ディズニーランドのコーナーも設置されています。
文化・創造産業においては、ネットゲーム、漫画研究開発、映画・テレビという政府の重点発展分野で、既に全国トップとなっており、現在では、文化・創造産業は、張江ハイテクパークの主要産業のひとつに成長しています。
国務院(中国の最高行政機関。日本の内閣に相当します)は、2020年までに上海市を経済力と人民元の国際的地位に見合った国際金融センターに構築することを提起しています。
2020年は、上海市にとって区切りの年でもあるので、張江ハイテクパークが、低炭素化をキーワードにエコシティ化を進め、従来のIT、バイオ産業をより発展させ、独特の文化産業を創出する、上海でも極めてユニークなエリアとして成熟していることを期待して止みません。

中国人投資家に熱い視線、各地で物件視察ツアー

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【中国人投資家に熱い視線、各地で物件視察ツアー】

 

シノケン 上海の旅行会社と業務提携
 中国人投資家の不動産投資熱の高まりを受け、物件視察ツアーを企画する動きが広がっている。シノケングループは中国人投資家向け日本不動産視察ツアー企画で、中国の旅行会社2社と業務提携を締結した。提携を通じた中国人投資家向け販売で今年度5億円以上の売上を見込む。
 業務提携を結んだのは、上海国旅国際旅行社有限公司と上海揚子国際旅行社有限公司の2社。旅行会社側が日本の不動産に興味を持つ中国人を対象にしたツアーを企画、シノケングループが主催する不動産関連セミナーや物件視察などをオプションとして提供する。ツアーを通して投資家が成約した場合、シノケングループは提携旅行会社にフィーを払う。11月上旬ごろに第一弾ツアーを実施する予定だ。個人の富裕層を対象に、2000万から3000万円台の区分所有物件や、7000万から8000万円台の投資用アパートを販売していく考え。
 シノケングループは2006年に中国で不動産事業を開始、昨年12月には現地法人を子会社化するなど、早期から中国市場を意識してきた。今後、北京・広州等の他の中国主要都市の旅行会社とも業務提携を進め、10社程度と業務提携を結びたいとしている。中国人投資家に対応するスタッフも増員していく。
 今年7月に個人観光ビザの発給要件が緩和され、中国からの旅行者は、これまでの10倍の1600万世帯に増加すると予想されている。かねてから日本の不動産への投資意欲が高まっていることから、観光を兼ねた日本の不動産視察ツアーの需要も高まるとみられる。
 中国製品を紹介するネットショッピングサイト運営のジェーシーヒア(東京都江東区)は、7月1日に第1回中国向け日本不動産ツアーを開催、中国から7人の資産家が参加した。都内のみならず、岐阜、長野まで足をのばし、ワンルームマンションからセカンドハウス用の戸建て物件まで見学した。
 投資用ワンルームマンションを扱う日本クリード(東京都文京区)にも、観光で来日した中国人が会社見学に訪れる。中国語対応の体制などが十分ではないため、現状では取り引きはほとんどないが、今後対応していこうと動き始めている。

雑誌【不動産鑑定8月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

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芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください)
 上海通信8月号記事
最後の一等地へ投資した中国不動産企業
上海随一の観光エリア外灘
上海に旅行に来られる方が、必ず訪れると言っても良い程の上海随一の観光エリアがあります。それは、外灘(ワイタン。英語名は、The Bund)というエリアです。
外灘は、上海の浦東地区と浦西地区を2分するように流れる黄浦江の西側を走る全長約1Kmほどのエリアです。
このエリアは、19世紀から20世紀前半まで続いた上海租界地の中心でもありました。
当時建築された50数棟の西洋式建築物が今でも残っており、かつては上海の政治・経済・文化の中心地であったことから、重厚で厳かな銀行・官公庁関連の建物が立ち並んでいます。
建物内には、レトロな雰囲気を生かして作られたオシャレなバーやレストランも多く、また、最近では、建物の1階にジョルジオ・アルマーニ、カルティエなどといったブランドショップが入居する例が増え、観光スポットとしてのみならず、高級ショッピングエリアとしても注目されています。
黄浦江の西側にある外灘の対岸には、陸家嘴金融地区があり、外灘からは、陸家嘴の高層ビル群を臨むことができ、外灘は、1年中、観光客で賑わっています。かつて東洋のパリとも評されていた頃の西洋式建築群と陸家嘴エリアの近未来的な高層ビル群のコントラストは、世界にまれに見る風景だと思います。
外灘には、昨年、香港上海ホテルズ(HSH)が運営するペニンシュラホテル上海(The Peninsula Hotel Shanghai)がオープンしています(ペニンシュラホテルとしては世界で9軒目です)。ペニンシュラホテルが建てられた場所は、元イギリス領事館があった場所です。ここは、外灘源とも言われ、言わば、外灘発祥の地でもありました。HSHは、20世紀前半までは、上海で4軒のホテルを運営していたことから、故郷への凱旋とも言われ、注目が集まりました。
ペニンシュラホテル上海から、陸家嘴の高層ビル群が臨めることから、立地コンセプトは、中環(セントラル)の高層ビル群を臨めるペニンシュラ香港と同じと言っても良いかもしれません。
外灘の貴重な開発用地に集まる注目
今年の2月、外灘の南にある開発用地が92億2,000万元(約1,250億円)で落札されました。この開発用地は、敷地面積45,471.9㎡の上海外灘国際金融サービスセンター(8-1区画)と呼ばれるエリアです。このエリアには、オフィスビルや商業施設など、27万㎡の建物が建てられる計画になっています。
落札価格は過去最高額で、新たに上海で「地王」(土地競売で、過去最高額で落札したデベロッパーのことをこう呼びます)が出現したと、マスコミでもこぞって取り上げられました。
落札したのは、不動産開発・投資を中心に、旅行関連業も展開する香港メインボード上場企業である上海証大房地産有限公司(Shanghai Zendai Property Ltd )傘下の「上海証大置業有限公司」という不動産会社です。この競売には4社が参加しましたが、競売の様子がテレビでも放映されるなど、大きな話題となりました。
競売で落札されたと書きましたが、日本と中国では、「競売」という概念が異なります。
中国では、土地が国のものであることはご存知の方も多いことと思いますが、土地(正確に言えば土地使用権)を新たに供給する際には、「競売」という形を取るのが原則です。従い、新たに土地が供給されるような場合には、日本のように所有者(中国では国家)と購入希望者が相対で価格を決めることはありません。
また、土地使用権売買で特徴的なのは、規模が大きい(金額が大きい)ということです。従い、実力のあるデベロッパーでないと競売には参加することすらできません。逆に、実力には疑問符が付いても、デベロッパー以外の資金力のある企業が競売に参加し、落札する例もあります。
以前、JVのアレンジメントをしていた頃、ある香港系デベロッパーに、10万㎡(地上50数階建)の複合ビルを建設できる広州市の一等地のプロジェクトを紹介したことがありました。先方からは、10万㎡では小さすぎて話にならない、最低でも100万㎡は欲しいと言われて唖然としたことを覚えています。しかし、冷静に考えると、実際、この企業は大連市で300万㎡以上の開発をする計画を発表していたので、担当者が話していたことは決して大げさではないと感じたものです。
このような豊富な資金力のある企業が高額で落札してきた結果、土地価格、ひいては住宅価格を上昇させたとして、3月中旬には、国有資産監督管理委員会は、不動産を本業としない中央政府直轄国有企業78企業グループに対し、不動産事業からの撤退を命じました。撤退を命じられた企業には、中国石油大手の中国石油化工(シノペック)、中国海運大手の中国遠洋などが含まれています。中国メディアは、78社が保有する不動産・土地使用権の簿価は1,000億元(約1兆3,500億円)前後あり、これらの土地が一度に放出されれば、中国の不動産市場が値崩れを起こす可能性もあると報道しています(この報道のとおりになれば、今年の秋頃には、バーゲンセールが始まるかもしれません)。
外灘最後の一等地を譲り受けた中国企業
 
6月の中旬、外灘最後の一等地と言われていた開発用地の権益の一部を、中国企業が購入しました。正確に言えば、開発権を有している会社の株式の約6割を譲り受けたのですが、このNEWSも、前述した「地王」ほどではないものの、大きく取り上げられました。
この開発用地は、外灘204区画と呼ばれるエリアで、敷地面積が22,465㎡あり、、オフィス・商業施設・ホテルなど建築が可能なエリアです。
購入したのは、SOHO中国有限公司(SOHO China Ltd.以下、SOHO中国と言います)というデベロッパーです。204区画全体で189,000㎡(内、地上面積は112,312㎡)の建物が建てられる予定ですが、このうち、株式譲渡により、81,000㎡(内、地上面積69,000㎡)の建物を開発できる権利を得ました。
SOHO中国は、香港メインボードに上場し、主に、北京で不動産開発を行っている中国大手不動産企業です。
204区画は、前述した8-1区画よりも外灘中心部に近いエリアに位置します。それだけでなく、豫園(明代に造られた、400年以上の歴史を持つ古典庭園。外灘と並ぶ上海の観光スポット)にも近く、陸家嘴の中心エリアを臨むことができる立地の良さがあります。ちなみに、204区画の対岸には、台湾系のデベロッパーが開発した湯臣一品(TOMSONRIVIERA)という超高級マンションがあります。販売単価は、建築面積ベースで15万元/㎡(約200万円/㎡)で、東京の高級マンションを上回ります。部屋面積は、400~1,200㎡ですから、総額は6,000万元~1億8,000万元(約8億円~24億円)です。いかに高級なマンションであるかがお分かりいただけると思います。
204区画譲渡のNEWSが注目されたのは、外灘の最後の一等地であったからのみではありません。開発権を有する会社の株を譲り受けたのが、SOHO中国であったからです。
SOHO中国は、北京でSOHOビル(複合施設)を多数建設し、成功を収めている企業です。SOHOとは、皆様ご存知のように、元々はsmall office/home office を意味しますが、SOHO中国が北京で展開するSOHOビルは、一般的なSOHOのイメージとは異なるものです。SOHOビルは、どれも個性的です。中には、日本でも有名な国際的な建築家である隈健吾氏が設計したものもあります。SOHOビルは、いわゆるSOHOとしての機能だけではなく、商業施設も擁し、ファッション性も備えています。SOHOビルに住むことは、若い人達への最新のライフスタイルの提案でもあり、北京ではこの提案が受け入れられていると言えます。
SOHO中国による上海不動産投資
 
SOHO中国は、これまで北京を中心に開発を進めていたのですが、昨年の8月に、上海中心部にある高層ビル「東海広場」をモルガンスタンレーから購入しました。これを足がかりに、上海進出を図ったのです。東海広場の購入により、SOHO中国が潤沢な資金力を誇示したことや、これだけの規模のアセットを中国国内企業が購入したことは、市場に大きなインパクトを与えました(これまでは、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックスなどといった外資系企業が上海の不動産に投資していたことが多かったのですが、これを機に、中国国内企業による不動産投資が目立つようになりました)。
東海広場は、52階建てのオフィスビルです。2006年4月までは不良債権としてポツンと建っていたものをモルガンスタンレーが2億5,000万ドル(約19億元)で購入し、竣工させたものです。不良債権と言っても、外壁の一部と内装ができていなかっただけで、52階までは建てられていましたので、非常に目立つ建物でもありました。モルガンスタンレーが購入するまでは、52階建てで規模が大きいこともあり、あのビルはこのまま不良債権として残ってしまうのではないかとさえ言われていました。ちなみに、SOHO中国が東海広場を購入した価格は24億5,000万元(約330億円)ですから、売却したモルガンスタンレーは、不良債権を竣工させるまでに要した内装工事費用などを差し引いても3、4億元のキャピタルゲインを得たことになります。
東海広場を購入した際、SOHO中国の代表である潘石屹氏は、上海に進出する理由を、上海は北京と共に成熟したエリアであるだけでなく、上海のオフィス、リテールは、住宅と比較してまだ価格が安いうえに、大きな滞在力があると話しており、次にどんなアセットへ投資するのかに注目が集まっていたのです。
ところで、話は少しそれますが、中国では、土地の価格が低いのか高いのかについては、日本のように、土地面積当りの単価で表示する習慣はありません。
通常は、楼面地価と言って、総建築面積当りの単価で表示します。
8-1区画の楼面地価が、34,100元/㎡であったのに対し、SOHO中国が購入した2-1区画の楼面地価は32,600元/㎡でした。昨年度の上海の住宅地の平均楼面地価は7,230元/㎡でしたので、この水準と比較すれば、外灘エリアの二つの楼面地価水準がどの程度の水準であるかお分かりいただけるかと思います。
SOHO中国の役員のひとりは、204区画の楼面地価は、購入する価格としては非常に妥当な価格であるとコメントしています。この価格は、SOHO中国が、この区画を譲り受ける為に譲渡主サイドと度重なる交渉を経たうえで成立したものであるようなので、苦労の末成立した価格に大変満足しているようにも思えます。私の目から見ても、このエリアのロケーションから考えると、この価格は決して高くはなく、むしろ安いくらいの価格であると感じます。
SOHO中国の役員は、このエリアの商業施設の現在の賃料水準は、専有面積ベースで約40~50元/㎡・日であるが、204区画プロジェクトが完成する予定の2013年下半期には、まだまだ賃料は上昇するであろうと予測しています。
SOHO中国の投資スタンス
数ヶ月前、SOHO中国の代表である潘石屹氏は、投資するならば北京より上海が良く、現在のところ、上海への投資額は会社全体の10%に満たないが、これから3、4年間は上海への投資を加速すると公表していました。今回の投資は、まさに狙いどおりの投資であったことでしょう。
潘石屹氏は、東海広場への投資と204区画への投資を明確に分けています。
東海広場は、上海中心部にあるオフィスであるのに対し、204区画は、周囲に交通の中枢とも言えるエリアや、豫園などがあり、旅行客など人の流れが多く、また、商業施設とオフィスなどの複合施設計画であるため、二つの異なるタイプの投資をしたと考えているのです。
上海での二つの異なるタイプの投資を経験したことで、SOHO中国は、自信を深めているようです。潘石屹氏は、204区画を譲り受けた後、現在ある140億元の現金のうち、昨年と同様に、今年も100億元程度の投資をしたいとコメントしていました。また、現在、政府の発令した新政策の影響で住宅マーケットが影響を受け、成約量が落ちているのは明らかであり、成約価格も下落する可能性がある一方で、新政策の商業不動産への影響は大きくないので、今後は、良い商業施設に投資したいとコメントしています。
SOHO中国が、次にターゲットにする上海の商業不動産が何なのかに注目したいと思っています。

 

雑誌【不動産鑑定9月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

8666 15芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
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早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp  までご自由にご連絡ください)

上海通信9月号記事

中国政府の威信をかけた不動産価格抑制策の効果
中国不動産はバブル? 
中国不動産がバブル状態にあると言われて久しいのですが、仮にバブルの状態であるとしても、中国では、まだ、バブルがはじけるような事態を経験したことはありません。バブル崩壊という苦い経験がある日本は、中国不動産について、安易に日本のバブルと結びつけたがる傾向にあるのではないかと感じます。
バブルの懸念があることを心配しているのは、政府やごくごくわずかな専門家などで、一般の中国の方は、中国の不動産価格は(少なくとも長い目で見れば)上がると考えています。
これは、①不動産業は、中国の経済の重要な推進役ともなっている為、政府が、不動産業に大きな打撃を加える(不動産価格を下げさせる)ようなことはしない、②中国の経済はまだまだ発展の余地があり、経済の発展と共に不動産価格は上昇する(GDPが毎年10%前後で推移していけば、それに伴い資産価値は上がる)、③中国の各都市はまだ発展途上で、開発の余地が多く残されている(中国では、現在の都市化率は低く、今後、都市化率は高くなるなどといわれます) などと考えられているからです。
私が、日本のバブル崩壊のことを話しても、ほとんどといってよいほど理解していただけません。この意味では、日本で昔あった、「土地神話」と同じ状況が中国にはあるといえます。
不動産市場の過熱抑制に乗り出した中国政府
 
2008年以降、金融危機の影響に対処するため、不動産業にてこ入れ策を実施した結果、2009年は住宅価格が上昇しました。
今年の6月末に公表された、外資系不動産コンサルティング会社ナイトフランクが世界47の国・地域を対象に行った調査によると、2009年に前年比で不動産価格が最も上昇したのは中国で、対前年比68%増であったそうです。
国務院は、こうした急激な価格上昇を抑制する為、今年の1月、新たな政策を発表しました。この政策は、「不動産市場の安定的かつ健全な発展を促進することに関する通知」(以下、国11条といいます)と題する不動産政策です。
国11条では、主に下記の3つのことが強調されています。
①     住宅供給の増加
保障住宅(福利政策的住宅)や、中小規模の一般分譲住宅の建設を加速させる内容となっています。
これまでの不動産政策は、住宅価格の抑制を主な目的とされるものが多かったといえますが、住宅市場の需給を改善させることにより、価格の上昇を抑制しようとしているところに特徴があります。
②     投機的不動産の購入の指導・抑制
   自己使用の住宅を購入する為のローンを支援する一方で、2戸目の住宅購入をする際、すでにローンを利用して住宅を購入した世帯は、ローンを申請する際の頭金比率は40%以上でなければならないことになりました。これは、2戸目の住宅購入を投資とみなし、ローンを厳格に管理することで投資を直接的に抑制しようとしたものです。
③     不動産市場管理の強化
   新たに市場に出される際に実施される土地の入札方法を改善することなどが盛り込まれています。これまでの入札方法は、最高価格を提示した企業が土地を落札しており、このことが土地価格の高騰を招いた要因の一つとされていました。従来の入札方法を見直すことで、土地価格の高騰ひいては住宅価格の高騰を抑制しようとしたものです。
 ところが、この政策の効果は非常に限定的でした。政策の発表後、住宅販売価格が下がるどころか、前年同月比10%を上回るハイペースで急騰しました(前ページの図を参照)。不動産価格の急騰は、マイホームを持ちたくても持てない一般庶民の不満を募らせるだけでなく、急激に価格が下落する際に中国経済が大きな打撃を受けるような事態を避けるべく、今年の4月、更なる不動産抑制策「一部の都市における住宅価格の急騰を断固として抑えることに関する通知」(以下、国10条といいます)を発表しました。
  国10条は、住宅ローンについての更なる規制や、不動産関連税制の導入などを含むもので、政府の、何としても不動産価格の高騰を抑制しようとする意気込みを感じさせるものです。
  住宅ローンについては、①建築面積90㎡以上の自己居住用住宅を購入する場合、頭金比率は30%を下回ってはならない、②2戸目の住宅を購入する場合、頭金の比率は50%を下回ってはならなず、貸出金利は、基準金利の1.1倍を下回ってはならない、③3戸目以上の住宅を購入する場合、頭金比率と貸出金利の水準を大幅に引き上げなければならない、という内容になっています。
  不動産関連税制については、不動産保有税を早急に導入することとされています。
  不動産保有税は、日本の固定資産税にあたるもので、上海では、万博終了後にも導入されるのではないかとメディアで報道されています。
  不動産保有税は、税率が住宅などの評価額の0.8%/年で、自己居住用住宅には課されず、それ以外の投資物件に課されるというのが大きな特徴です。不動産保有税が課さることを嫌い、投資物件を複数保有している投資家が物件を手放し、中古住宅の価格を抑制させようというのがねらいです。
国10条の効果は?
 国10条が発表されてから、政策の効果についての議論が活発に行われました。
 政策が発表された当初は、政府が不動産価格抑制にかつてないほどの力を入れていることから、不動産価格は調整局面に突入することが予測され、一般庶民にとっては、最後の住宅購入のチャンスであるともいわれました。
  政策の発表後、消費者の様子見ムードが広がり、成約量は急激に落ちましたが、デベロッパーは販売価格を下げないところが多く、統計上は、住宅販売価格は下がらず、むしろ上昇していました。
  政策が発表されてから1ケ月が経過した頃から、政策に対応するため、値下げをするデベロッパーが目立つようになりました。不動産大手企業である万科企業や緑地集団は、一部の新築販売物件を対象に15~20%という大幅な値下げを開始しました。
  6月中旬になると、高級住宅の成約価格が大幅に下落しているという報道が相次ぎ、次いで、今後、発展が見込まれるエリアとして価格が急激に上がっていた新興エリア(例えば、ディズニーランドの建設予定地である川沙というエリア)の新築販売価格が下落し、政府の政策の効果が徐々に現れてきたという報道が盛んに行われるようになりました。
   こうした、成約価格が下落しているという報道を裏付けるように、7月の上旬に発表された中国国家統計局の調査で、6月の中国主要70都市の不動産価格は前月比0.1%下落したことが分かりました(前年同月比では11.4%上昇。前年比伸び率の鈍化は2ケ月連続。図を参照。)。前月比でのマイナスは1年4ケ月ぶりで、価格の頭打ち感が出、不動産価格抑制策の効果があらためて示された形となりました。
   この統計結果を受け、一部メディアでは、不動産市場の過熱抑制策が取り消される見通しであるとも報じられましたが、中国政府は、不動産市場の過熱抑制策が撤回されるとのうわさを否定し、今後も抑制策を継続すると言明しました。
予測困難な不動産政策の効果
 
 前述したように、一般の中国人は、不動産の価格は下がることはないと考えています。ところが、最近の状況を見て、ひょっとすると価格はさらに調整し、相当下がるのではないかと考える中国人が、私の周りにもちらほら見られるようになりました。
2008年の秋頃から2009年の春先頃にかけて価格調整していたことがありましたが、このときは、価格は一時的に下がることはあってもいずれは上がるであろうと楽観的に考える人がほとんどであったと思います。今回は、価格が相当下がるのではないかと考える人がちらほら見かけられるほど、不動産価格抑制策が厳格であるともいえるでしょう。
 ちなみに、前回の調整局面時、2009年の初めには、大手の外資系不動産コンサルティング会社や金融機関が、不動産価格動向の予測をしていました。調整局面は相応に続き、回復するまでは時間がかかるというのが一般的な予測でしたが、ことごとく外れました。ある国際的な大手不動産コンサルティング会社では、2009年には10%、2010年には5%価格が下落し、11年までは価格が回復しないと予測していたほどです。
  ところが、実際には、2009年の3月頃から価格は回復し、現在の価格は、当時価格調整する前の水準を大きく上回る水準となっています。専門家でも判断を誤ってしまうほど、中国不動産の市場は予想しづらいのです。中国不動産市場は、政府の政策に左右されることも多く、この点が予想しづらくさせていますが、それだけではなく、不動産業の歴史が浅い中国では前例のない事態が起きたときに消費者がどう判断し、行動するのか予想しなければなりませんので、この点も市場を読みづらくしているといえるのではないでしょうか?
上海房地産展示交易会の視察
 
 上海では、今、まさに、前例のない事態になっています。
 最新の状況を肌で感じる為に、7月17日、「上海房地産展示交易会(上海不動産展示博覧会)」(以下、交易会といいます)に行ってきました。上海では、不動産をはじめとする展示会が盛んに行われています。不動産の展示会では、毎年、5月と10月に行われる展示会が最も有名で参加者が多いのですが、今回の展示会(交易会)は、5月、10月に行われる展示会とは同じ会場であるものの、例年、参加者はそれほど多くはありません。展示会には、多くのデベロッパーが参加し、自社の開発マンションなどを展示し、来場者に販売します。参加者は、気に入った物件があれば、デバロッパーが準備しているバスに乗り、物件を見に行くこともできます。展示会を視察することは、デベロッパーの参加数や来場者数、どんな物件に参加者が興味を持っているのかを直接見ることにより、その時々の不動産業界の状況を知ることができる、非常に良い機会でもあります。
   交易会の参加者は、予想どおり少ないものでした。参加者よりデベロッパーの社員数が多かったと書いている新聞もあったほどです。
   今回の参加デベロッパーの販売方法で特徴的だったのは、定価の5%前後の値引きをして販売(優遇販売)している会社が多かったことです。値引きなどの優遇販売は、交易会が開催されている3日間限定であることが多い為、今回、優遇販売を目当てに来場した人も多かったものと思われます。優遇販売としては、ほかに、「2房変3房」(2LDKを買えばもう1部屋をサービスし、3LDKになる。要は、3LDKを、2LDKを購入するのと同様の価格で購入できる、という意味です)などといって、見かけ上の販売単価は下げないものの、実質的に値引きを行っている物件も散見されました。この手の物件には、市の中心部から地下鉄で30分程度以上かかるエリア(上海の郊外エリア)に所在するものが多く見受けられました。2008年の秋頃から始まった前回の価格調整時には、優遇販売として、部屋を買えば車がプレゼントされるというものや、5%のみならず20%以上値下げするデベロッパーも少なくなかったことから考えると、現在は、派手な優遇販売は行われず、デベロッパーも比較的冷静であるといえます。デベロッパーがまだ冷静でいられるのは、2009年には全般的に販売が好調であったために資金繰りにも余裕があるからなのかもしれません。逆に、今の段階で大きく値下げしている企業は、資金繰りに不安を抱いているともいえるかもしれません。
今後の不動産価格の見通し
   現状では、販売価格はそれほど下がっていないものの、成約量は大幅に減っています。これは、資金繰りに窮しない多くのデベロッパーが大幅な値下げをしてまで売りたくないと考えているのに対し、消費者は、価格が下がる(調整が続く)可能性があり現在は様子を見たいと考えているからと思われます。現在購入を考えているのは、投資目的ではなく、実需で部屋が必要な方達が中心であるといえます。実需の代表的な例としてこちらでよく言われるのが、首套房(部屋の一次取得)、婚房(結婚に備えて購入する部屋。上海では、結婚前に部屋を購入するのが一般的です。これまで、部屋を持つことができるほどの経済力がない男性は、結婚するのはまだ早いと考えられてきました)、学区房(子供を良い学校に入学させる為に、良い学校がある学区内で購入する部屋)などです。
こう考えると、これから1、2ケ月間は膠着状態は続き、価格もあまり下がらない可能性は低くはないのではないでしょうか?
   現在とあまり変わらない(思うように販売価格が下がらない)状況が続いたとき、政府が、次に、いつ、どういう手を打つのかは非常に興味深いところです。

雑誌【不動産鑑定6月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

15 芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください)

上海通信6月号記事

今回から、万博開催を間近に控え、より活気付く上海から、上海の不動産に関するレポートをお伝え致します。
成長が続く中国、とりわけ上海を語る上で欠かせないのが、国家級開発区の中でも唯一金融貿易区として指定されている、陸家嘴金融貿易区(以下、「陸家嘴」と略します)です。陸家嘴(Lujiazui)と言ってピンと来ない方でも、森ビルが開発した上海環球金融中心(Shanghai World FinancialCenter)、東方明珠塔(Oriental Pearl Tower、別名「テレビ搭」)があるエリアと言えばお分かりいただける方も多いのではないでしょうか?
上海は、中国経済を牽引する最前線の都市として、1990年代前半から超高層ビルの建設気運が高まり、現在では、20階以上の高層ビルが4,000棟を越える、世界で最も高層ビルが密集する都市となっています。中でも、陸家嘴は、1998年竣工の「金茂大厦」(Jin Mao Building 420.5m)、2008年竣工の「上海環球金融中心」(以下、「SWFC」と言います。492m)など、上海を代表する超高層ビルが建ち並び、銀行・証券会社などの金融機関を中心とし、法律・会計系コンサルティングファーム、シンクタンク、商社など、多国籍企業が集積するエリアとなっています。
中国最高峰となる上海中心大廈
先日、陸家嘴で開発が進む上海中心大廈(Shanghai Tower。以下、「上海中心」と略します)の基礎工事が終えたというNEWSがありました。
上海中心は、階数が128階、高さは632m、延床面積は約56万㎡(内、地下部分は約18万㎡)のオフィスビルで、2014年に竣工が予定されています。上海中心は、前述した金茂大廈の南隣、SWFCの西隣に位置し、完成すれば、3棟で「黄金のトライアングル」を形成することになります。
この上海中心は、世界的な金融危機が進むさなか、内需拡大に力を入れる政府の方針を示す象徴として、総事業費148億元(約2,000億円)をかけ、2008年11月に着工しました。完成すれば中国一の高さを誇る建物の基礎工事をわずか1年足らずで終えてしまうというのは、上海のスピード感に他なりません。おおざっぱな言い方をすれば、中国の工事のスピードは日本の2倍です。これは、中国での工事が24時間体制で行われることも珍しくないからです。24時間体制での作業が、発展する上海を支えていると言っても過言ではありません。上海中心が着工されたのが、SWFCが竣工して間もない時期であった為、ここ上海でも、よく、SWFCに対抗して上海中心が建てられることになったと思われる方も多いようなのですが、実は、1993年年に陸家嘴金融貿易区の構想ができた時には、すでに、3棟の超高層ビルを建てる計画ができあがっていました。つまり、上海中心は、当初から計画されていた3棟目の超高層ビルに他なりません。
上海中心は、アメリカの世界的な設計事務所 ゲンスラー社による設計で、中国のダイナミックな未来を表現する為、昇り竜をイメージしたデザインとなっています。
ゲンスラー社の設計案は、ガラス・カーテンウォールで外側を覆われたビルが螺旋状にねじれながら高くなってゆくという案です。構造は、9つの円柱状の建物が垂直に積み重なり、さらにこれらを二重のガラスのファサードが覆うものになっています。内側のガラス・カーテンウォールが建物を囲み、外側のガラス・カーテンウォールが螺旋状に上昇するように全体を覆うデザインは、まさに昇り竜と言っても良いかもしれません。内側と外側のガラス・カーテンウォールの間には、地表から上層階まで異なる高さに9つのアトリウムがあり、一般市民に開放される予定になっています。また、建物の下層部には商業施設やイベントスペースなどが設けられ、最上部には展望台が設けられる予定になっています。
国務院(中国の最高行政機関。日本の内閣に相当します)は、2020年までに上海市を経済力と人民元の国際的地位に見合った国際金融センターを構築することを提起しています。上海万博後の、上海、中国の経済はどうなってしまうのか?上海万博後は、経済成長に歯止めがかかるのではないか?はたまた、不動産バブルがはじけるのではないか?ということを幾度となく聞かれましたが、上海万博は、あくまでも上海、中国の経済成長の通過点にすぎず、上海、中国の発展はまだまだ続くと考えています。上海を国際金融センターにするという構想提起は、万博開催には飽き足らず、既に先を見据えている(成長を止めない)というメッセージではないでしょうか?上海中心の昇り竜をイメージしたデザインは、上海の発展のシンボルであり、2020年には、上海中心は、国際金融センターとしての上海の中心的役割を担っていることでしょう。
香港のランドマークが上海に登場?
上海中心は、中国の政府系企業による開発ですが、陸家嘴の開発は、外資系デベロッパーの進出にも支えられています。
外資系デベロッパーによる開発の目玉として今話題となっているのが、上海国金中心(Shanghai International Finance Centre。以下、「上海IFC」と略します)です。
上海IFCは、香港で最も高いビル 香港International Finance Centre を開発した、香港最大級のデベロッパー新鴻基地産(SunHung Kai Properties)が開発を進めているプロジェクトです。香港のランドマークと言えるIFCが陸家嘴の中心部(地下鉄2号線「陸家嘴」駅の目の前)にできると言えば、そのインパクトの大きさを想像していただくことができるでしょう。
上海IFCは、高さ260mと250mのツインタワーと、別棟(85m)で構成される、延床面積約40万㎡の複合商業施設で、今年から順次完成する予定になっています。
延床40万㎡の内訳は、オフィス21万㎡、商業施設10万㎡、ホテル9万㎡です。
オフィス部分(全部ではありません)は、HSBCが20フロアーを使用し、中国総本部を置くことになっており、ビル命名権も取得しています。ホテルには、リッツカールトンとWホテルが入居することになっています。商業施設には、高級ブランドが数多く出展すると言われ、上海IFCの隣に位置する上海最大の商業施設正大広場と共に陸家嘴最大の商業エリアを形成することは間違いないでしょう。
芸術作品とも呼べる陸家嘴のオフィスビル
陸家嘴に建ち並ぶオフィスビルは皆個性的なものばかりです。
これも、日本と比べると自己主張の強いお国柄でしょうか?
ただし、これほど個性的なビルが並んでも違和感がなく、むしろ、個性的なビル群を全体として見るとしっくりくるのは私だけではないでしょう。
個性的なオフィスビルの中には、派手さのみが目立つものもありますが、芸術作品とも呼べるようなオフィスビルもあります。それもそのはずで、陸家嘴のオフィスビルは、世界的の著名な設計事務所が設立したものも多く、陸家嘴は、設計技術を競う場ともなっているのです。
SWFCのデザインは、シンプルでもありますが洗練されていると私自身は思うのですが、上海では、「巨大な栓抜き」とも言われています。細長い構造のうえ、最上部に四角い穴がある為、親しみを込めてそう呼ばれています。ちなみに、最上部には、世界で最も高い位置にある展望台があり、オープン以来、大変な人気です。
日系企業などが設計したオフィスビルもあります。
陸家嘴でも一際目立つ中銀大廈(Bank of China Tower、別名「中国銀行ビル」 43階建)や、時代金融中心(OneLujiazui 47階建)は、日建設計が設計したものです。
中銀大廈と言えば、映画ミッション・インポッシブルⅢで、トムクルーズが、隣の浦東発展銀行ビルへと飛び移る名シーンが撮影されたビルでもあります。中銀大廈は、陸家嘴で開発されたオフィスビルがまだ数少なかった2000年に竣工しました。陸家嘴で開発が始って数本目のビルの設計を日系企業が行ったというのは、日本人として誇らしく思えてきます。
また、上海銀行の本社ビルでもある上海銀行大廈(Bankof ShanghaiTower 46階建)は、東京都庁を設計した丹下健三氏が設計したものです。
エントランスは吹き抜けとなっており、ゴージャスな作りは、都庁内のエントランスを彷彿とさせます。外観も、都庁のデザインとどことなく似ています。
上海のオフィスマーケット
これだけの高層ビルが建ち並ぶ、陸家嘴、上海でのオフィスマーケットはどうなっているのか?と興味を持たれる方もいるかと思います。
ここで、上海のオフィスマーケットを見ることにします。
まず、上海市内全体のオフィスマーケットなのですが、昨年度のグレードAオフィスの賃料は下落傾向にありましたが、昨年度の第四半期に下げ止まり、今年に入り、若干上昇しています(図表1)。これは、中国の景気回復傾向が鮮明になるにつれ、金融危機に事業の縮小を図っていた外資系企業が攻勢に転じる動きがあったり、上海への進出企業が増えていることなどが影響しているからであると考えられます。
次に、上海の主要エリアのグレードAオフィスの賃料を見ることにします。図表2では、上海の主要エリア毎の賃料をグラフにしていますが、主要エリアの平均賃料が6.9元/㎡・日であるのに対し、陸家嘴エリアは6.8元/㎡・日となり、平均賃料を下回っています。金茂大廈、SWFCを始め、上海随一のグレードAオフィス集積エリアであるのに何故?と思われるでしょう。
数年前までは、陸家嘴エリアが上海で最も賃料が高く、金融機関など賃料負担能力が極めて高いテナントでしか入居できませんでした。稼働率も高く、オーナーサイドも強気の賃料設定をしており、契約更新時には、オーナーから要求される賃料を払えずに退去せざるを得ないという企業も数多くありました(中国では、日本のような借家人を保護する制度がありません。したがい、貸主が有利で、契約更新時には、貸主は簡単に既存テナントが追い出すことができます)。現在では、陸家嘴エリアに大規模オフィスビルの新規供給が相次いだことから稼働率も低下し、オーナーも賃料を下げてでもテナントを確保に努めている為、賃料相場も下落しました。図表3にあるように、稼働率は、主要エリアで最も低くなっています。ただし、今年に入ってからは、他の主要エリアと同様、賃料水準・稼働率とも若干上昇しています。
陸家嘴の今後のオフィスマーケットはどうなるのでしょうか?
ほぼ間違いなくマーケットが回復し、将来は、再び、上海で最も賃料が高いエリアになると考えられます。陸家嘴は、前述した上海国際金融センター構想の中心部であり、今後も多国籍企業の本部が移転・新設される動きが続くと予想されるからです。政策が決まれば、その政策どおりに物事が進められる-。当たり前と言えば当たり前のことなのでしょうが、ここ中国では、大きい政策ほど、政策が遵守される確率は高くなり、政策が不動産マーケットに与える影響が大きくなります(今年に入り、中国のハワイと言われる海南島を国際的なリゾート地として開発を進めていくと政府が発表して以来、海南島の不動産価格は1ケ月で倍になったというNEWSもありました)。
今後も、国際金融センターを目指して発展を続ける上海から、HOTな情報をお届けしたいと思います。