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国慶節期間の休業のお知らせ

平素よりご愛顧頂きまして誠にありがとうございます。

国慶節の期間中(10月1日~7日)は、誠に勝手ながら休業とさせて頂きます。

なお、9日(土)は通常営業致します。

何卒ご了承頂きますよう宜しくお願い申し上げます。

雑誌【不動産鑑定10月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

芝田 優巳(しばた ゆうじ)
(株)シノケングループ 経営企画部 海外事業室課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産(株)でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、(株)シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問合せ・感想・取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問合せなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください。
上海通信10月号記事
未来都市(エコシティー)構想があるエリア
常に未来ビジョンを掲げる中国 
中国を例える際に、かつては、よく「世界の工場」とも言われていましたが、最近では、「世界の消費市場」などとも言われるようになっています。
中国は、未来を見据え、常にビジョンを描きながら発展してきています。中国の発展スピードは、世界の先進諸国と比べても非常に速いので、過去の中国から現在の中国の姿を把握するのではなく、未来の中国を見据えながら現在の中国を把握するという視点も重要になってくると思います。
今回は、かつて「世界の工場」と呼ばれた中国とはかけ離れた、エコシティーを目指すエリアについて紹介させていただきます。これまでにあまり想像できなかった方にとっては、中国の未来像から、現在の中国の都市をとらえる良い機会となるかもしれません。
未来の理想都市を目指す張江ハイテクパーク
 
現在開催されている上海万博のテーマである「Better City Better Life」という理念をいち早く取り入れ、実現を目指しているエリアがあります。張江高科技園区(Zhangjiang Gaoke Hightechnology Park。以下、張江ハイテクパークといいます。)というエリアです。
張江ハイテクパークは、1992年、環球金融中心(森ビルが開発した101階建てのオフィスビル)がある陸家嘴金融貿易区の東南(地下鉄2号線「陸家嘴」駅から、「張江高科」駅まで約15分)に創設された国家級ハイテクパークで、上海のシリコンバレーと呼ばれています。駅を中心に企業の研究所などが集まり、歩道には緑地が整備された広い道路に沿って近未来的な建物が建てられており、外観上も、シリコンバレーと呼ぶにふさわしいものです。張江ハイテクパークは、中国で最初にして最大の経済特区である浦東新区内にあり、浦東新区の4大重点開発エリアのひとつとなっています。
張江ハイテクパークでは、IC(集積回路)、バイオ医薬(バイオテクノロジーを駆使して製造する医薬品)、ソフトウエアが主産業と位置づけられています。エリア内には5,000以上の企業が進出し、就業者数は、約13万人にものぼります。
張江ハイテクパークは、25平方キロメートルという広大な敷地があり、ハイテク産業エリア、技術イノベーションエリア、科学研究教育エリア、生活エリアなど、機能別に区画されています。
また、企業の研究機関や大学を単に集積させるだけでなく、「産・学・研」を一体化し、最先端技術の発展基地を目指しているのにも特徴があります。張江ハイテクパーク内には、北京大学上海マイクロ電子研究院、精華大学情報学院上海マクロ電子センター、復旦大学国家モデルソフトウエア学院、復旦大学(張江)マイクロ電子研究院、中国医薬大学などが進出しています。
中国では、道路に名前が付けられていますが、張江ハイテクパーク内には、アインシュタイン通り(Aidisheng Road。中国語で愛迪生路)、ニュートン通り(Niudun Road。中国語で牛頓路)、ダーウィン通り(Daerwen Road。中国語で達尔文路)、キューリー通り(Juli Road。中国語で居里路)など、国内外で功績のあった著名な科学者の名前が付けられた通りも少なくありません。張江ハイテクパークからも、歴史に残る科学者(技術者)が誕生してもらいたいという政府の願いが込められているのだと思います。
転機となったIBMの進出
 
張江ハイテクパークには、世界を代表する企業が多数進出しています。
数年前でさえも、張江ハイテクパークはすでに15年以上の歴史を誇り、GE、マイクロソフト、ロッシュ、モトローラ、シンドラー、ハネウェルなどの欧米企業のほか、ソニー、松下、キリンビール、味の素、第一三共、資生堂などの日系企業や、中国最大のインターネットビジネスのプラットフォームである阿里巴巴(アリババ)が進出していました。
2008年に、IBMが、上海中心部にあった拠点を張江ハイテクパーク内に移転しましたが、このことは、張江ハイテクパークをさらに発展(進化)させる大きなきかっけとなりました。
移転前のIBMの拠点は、5~6,000平方メートル程度しかなく、すでに手狭となっていました。
IBMにとっても、中国は重大な戦略拠点で、将来、事業を拡大させることを前提に、移転先を探す必要がありました。上海中心部ではまとまった面積を確保することが困難であったため、必然的に、張江ハイテクパークなど、市中心部より少し離れた郊外を移転先の有力候補として検討することになりました。
IBMは、国家級ハイテクパークであり、国際的企業も多数進出する張江ハイテクパークに注目しましたが、同社は、交通インフラや商業施設の整備、ビジネス環境に物足りなさを感じ、張江ハイテクパークを管理する張江集団や浦東新区政府などに対し、これらの環境の更なる改善を要求しました。浦東新区政府などは、IBMの要求に応じることを約束し、IBMは、移転の決断をしました。張江集団のトップ(副社長)は感激し、「IBMが張江ハイテクパークに進出することは、我々にとって大きなチャンスでもあると同時に、大きな挑戦でもある」と発表し、これ以来、張江ハイテクパークの更なる発展が始まりました。
張江ハイテクパークの新しい発展戦略
張江ハイテクパークは、IBMに要求された項目を整備すること以外に、他のハイテクパークとの差別化を図るために、急速に“低炭素化”を進めることにしました。
張江ハイテクパークを訪れると、上海とは思えないほど緑が多く、空気も良く、涼しげな印象を受けます。街は整備され、道路は広く、歩道にはきれいに緑地帯が設けられており、照明灯はすべてLED灯が採用されるなど、“低炭素化”の試みを随所に見ることができます。
張江ハイテクパークが、環境保護、資源循環経済、清潔生産を提唱し、ハイテクパーク内の緑化や公共施設の設置、省エネルギー型建設などを進めてきた結果です。
計画では、年内(2010年)までに緑地を770ヘクタールまでに増やし、エリア内の緑化率を30%以上にし、その中に2つの湖、ひとつの主体公園、汚水・雨水の総合処理施設、緑地帯を保護する為のスプリンクラー施設、太陽エネルギー利用施設などを作ることになっています。
また、ハイテクパークでは、優秀な技術者の受入れにも力を入れてきました。
昨年、金融危機による就職難となり、失業者数が増加していた際には、1万戸規模の住宅を技術者に提供するとアナウンスし、優秀な技術者を集めようと試みました。計画では、今年末までに同様の人材マンションを建設し、17,000人の技術者の受入れを目指しています。
張江ハイテクパークが目覚しい発展を見せるなか、数年前から、張江ハイテクパークで働く男性は「張江男」と呼ばれるようになりました。張江男の一般的なイメージは、張江ハイテクパーク内の会社に勤務し、職場までは長時間をかけて通勤し、仕事も忙しい男性です。プライベートな時間が少ないために、ガールフレンドを見つけることもできず、また、異性にもあまり関心がないようにも見られていました。
あまり良い意味で使われることが多くなかった「張江男」も、ここに来て、違った意味で注目されているという記事が新聞に出ていました。記事によると、張江男の多くは、IT業界で働き、高学歴・高収入・高レベルなど四高である為ため、理想の結婚相手として人気が上昇しているというものでした。四高に目を付けた母親たちが「張江高科」駅や社員食堂などで、男性に娘のプロフィールを手渡しするなど、精力的に花婿探しをしているそうです。
低炭素化のシンボルLTRの開業
 
今年に入り、張江ハイテクパークの“低炭素化”を印象付けるニュースがありました。
ハイテクパーク内に、LRT(トランスロール。中国語では張江有軌電車)が開業したというニュースです。開業式には、上海市副市長や運営会社社長、ロール社社長などが出席し、盛大に開業セレモニーが行われました。
LRTの開業は、天津についで中国では2番目になります。LRTは、日本でも2005年に堺濱で開業に向け研究が進んでいましたが、導入には至りませんでした。LRTは、日本人にとってはあまり馴染みがありませんが、ヨーロッパでは広く運行されている電車です。
LRTは、「張江高科」駅から終点の「金秋路」駅までの全長9.2キロメートルを走行します。走行途中の停留所は15カ所あり、進出企業や研究機関、大学などを通り、ハイテクパーク内を横断します。列車のデザインは斬新で、各停留所にはLEDを使った照明、運行表示板、専用路には優先信号を装備するなど、景観にも環境にも配慮されたものになっています。
列車はフランス製(TRANSLORH3タイプ)で、ゴムタイヤ・ガイド方式が採用されています。このため、レールは1本しかなく、ゴムタイヤで一般道を走ります。最高時速は時速70キロですが、通常は、30~40キロ程度の運転です。実際に乗車してみると、静かで乗り心地は上々です。今年のLRT開業区間は第1期で、今後、第2期、3期と拡張され、最終的には総延長が約30キロメートルになることが予定されています。LRTは、一般車と違い排気ガスがなく騒音も極めて少ないので、新交通システムとして大いに期待されています。
2020年までの発展計画
今年、張江ハイテクパークのトップは、今後は、低炭素産業もハイテクパーク内の一大産業に加え、2020年までにエリア内の低炭素化を加速し、他のハイテクパークのモデル地区となることを高らかに宣言しました。
低炭素化(エコシティー化)は、環境先進国である日本やドイツの協力がなければなしえないことかもしれません。すでに多数が進出している日系企業にとっては、自国の最先端技術を生かす良い機会ともなるのではないでしょうか?
ドイツは、ハイテクパーク内にドイツセンター(German Centre)を設置しています。ドイツセンターには、多くのドイツ企業が入居しており、自社製品を展示しています。なかには、太陽光発電技術などをアピールすべく、環境関連製品もあり、目を引きます。自国の技術を他国に伝えるために、企業間で連携しているドイツの取組は、日系企業も参考にすべきかもしれません。
また、張江ハイテクパーク内には、新たな試みも行われています。
2008年、政府が主導となってアニメ産業の育成を進める一環として、「張江アニメバレー(中国語では、張江動漫谷)」の除幕式が行われました。中国では、国内でアニメ産業を育成する為に、ゴールデンタイムでのテレビ番組に外国製アニメを放映することを禁止していますが、アニメバレーの設立により、今後5~10年かけて、200あまりのアニメ関連産業の育成をハイテクパーク内で目指すというプロジェクトです。
今年の5月には、中国で初めてのアニメ博物館が、張江ハイテクパークの文化産業エリア内にオープンしました。張江アニメバレーの重要な施設として位置づけられ、「アニメの城」を目指して、入場者との相互体験の要素を多く取り入れた博物館となっています。博物館の建設は、5~6年先に浦東新区内にディズニーランドができることになっていることも影響している(「張江高科」駅から、ディズニーランド建設予定地最寄駅である「川沙」駅まで約15分)ようで、博物館内には、ディズニーランドのコーナーも設置されています。
文化・創造産業においては、ネットゲーム、漫画研究開発、映画・テレビという政府の重点発展分野で、既に全国トップとなっており、現在では、文化・創造産業は、張江ハイテクパークの主要産業のひとつに成長しています。
国務院(中国の最高行政機関。日本の内閣に相当します)は、2020年までに上海市を経済力と人民元の国際的地位に見合った国際金融センターに構築することを提起しています。
2020年は、上海市にとって区切りの年でもあるので、張江ハイテクパークが、低炭素化をキーワードにエコシティ化を進め、従来のIT、バイオ産業をより発展させ、独特の文化産業を創出する、上海でも極めてユニークなエリアとして成熟していることを期待して止みません。

中国人投資家に熱い視線、各地で物件視察ツアー

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【中国人投資家に熱い視線、各地で物件視察ツアー】

 

シノケン 上海の旅行会社と業務提携
 中国人投資家の不動産投資熱の高まりを受け、物件視察ツアーを企画する動きが広がっている。シノケングループは中国人投資家向け日本不動産視察ツアー企画で、中国の旅行会社2社と業務提携を締結した。提携を通じた中国人投資家向け販売で今年度5億円以上の売上を見込む。
 業務提携を結んだのは、上海国旅国際旅行社有限公司と上海揚子国際旅行社有限公司の2社。旅行会社側が日本の不動産に興味を持つ中国人を対象にしたツアーを企画、シノケングループが主催する不動産関連セミナーや物件視察などをオプションとして提供する。ツアーを通して投資家が成約した場合、シノケングループは提携旅行会社にフィーを払う。11月上旬ごろに第一弾ツアーを実施する予定だ。個人の富裕層を対象に、2000万から3000万円台の区分所有物件や、7000万から8000万円台の投資用アパートを販売していく考え。
 シノケングループは2006年に中国で不動産事業を開始、昨年12月には現地法人を子会社化するなど、早期から中国市場を意識してきた。今後、北京・広州等の他の中国主要都市の旅行会社とも業務提携を進め、10社程度と業務提携を結びたいとしている。中国人投資家に対応するスタッフも増員していく。
 今年7月に個人観光ビザの発給要件が緩和され、中国からの旅行者は、これまでの10倍の1600万世帯に増加すると予想されている。かねてから日本の不動産への投資意欲が高まっていることから、観光を兼ねた日本の不動産視察ツアーの需要も高まるとみられる。
 中国製品を紹介するネットショッピングサイト運営のジェーシーヒア(東京都江東区)は、7月1日に第1回中国向け日本不動産ツアーを開催、中国から7人の資産家が参加した。都内のみならず、岐阜、長野まで足をのばし、ワンルームマンションからセカンドハウス用の戸建て物件まで見学した。
 投資用ワンルームマンションを扱う日本クリード(東京都文京区)にも、観光で来日した中国人が会社見学に訪れる。中国語対応の体制などが十分ではないため、現状では取り引きはほとんどないが、今後対応していこうと動き始めている。

雑誌【不動産鑑定8月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

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芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください)
 上海通信8月号記事
最後の一等地へ投資した中国不動産企業
上海随一の観光エリア外灘
上海に旅行に来られる方が、必ず訪れると言っても良い程の上海随一の観光エリアがあります。それは、外灘(ワイタン。英語名は、The Bund)というエリアです。
外灘は、上海の浦東地区と浦西地区を2分するように流れる黄浦江の西側を走る全長約1Kmほどのエリアです。
このエリアは、19世紀から20世紀前半まで続いた上海租界地の中心でもありました。
当時建築された50数棟の西洋式建築物が今でも残っており、かつては上海の政治・経済・文化の中心地であったことから、重厚で厳かな銀行・官公庁関連の建物が立ち並んでいます。
建物内には、レトロな雰囲気を生かして作られたオシャレなバーやレストランも多く、また、最近では、建物の1階にジョルジオ・アルマーニ、カルティエなどといったブランドショップが入居する例が増え、観光スポットとしてのみならず、高級ショッピングエリアとしても注目されています。
黄浦江の西側にある外灘の対岸には、陸家嘴金融地区があり、外灘からは、陸家嘴の高層ビル群を臨むことができ、外灘は、1年中、観光客で賑わっています。かつて東洋のパリとも評されていた頃の西洋式建築群と陸家嘴エリアの近未来的な高層ビル群のコントラストは、世界にまれに見る風景だと思います。
外灘には、昨年、香港上海ホテルズ(HSH)が運営するペニンシュラホテル上海(The Peninsula Hotel Shanghai)がオープンしています(ペニンシュラホテルとしては世界で9軒目です)。ペニンシュラホテルが建てられた場所は、元イギリス領事館があった場所です。ここは、外灘源とも言われ、言わば、外灘発祥の地でもありました。HSHは、20世紀前半までは、上海で4軒のホテルを運営していたことから、故郷への凱旋とも言われ、注目が集まりました。
ペニンシュラホテル上海から、陸家嘴の高層ビル群が臨めることから、立地コンセプトは、中環(セントラル)の高層ビル群を臨めるペニンシュラ香港と同じと言っても良いかもしれません。
外灘の貴重な開発用地に集まる注目
今年の2月、外灘の南にある開発用地が92億2,000万元(約1,250億円)で落札されました。この開発用地は、敷地面積45,471.9㎡の上海外灘国際金融サービスセンター(8-1区画)と呼ばれるエリアです。このエリアには、オフィスビルや商業施設など、27万㎡の建物が建てられる計画になっています。
落札価格は過去最高額で、新たに上海で「地王」(土地競売で、過去最高額で落札したデベロッパーのことをこう呼びます)が出現したと、マスコミでもこぞって取り上げられました。
落札したのは、不動産開発・投資を中心に、旅行関連業も展開する香港メインボード上場企業である上海証大房地産有限公司(Shanghai Zendai Property Ltd )傘下の「上海証大置業有限公司」という不動産会社です。この競売には4社が参加しましたが、競売の様子がテレビでも放映されるなど、大きな話題となりました。
競売で落札されたと書きましたが、日本と中国では、「競売」という概念が異なります。
中国では、土地が国のものであることはご存知の方も多いことと思いますが、土地(正確に言えば土地使用権)を新たに供給する際には、「競売」という形を取るのが原則です。従い、新たに土地が供給されるような場合には、日本のように所有者(中国では国家)と購入希望者が相対で価格を決めることはありません。
また、土地使用権売買で特徴的なのは、規模が大きい(金額が大きい)ということです。従い、実力のあるデベロッパーでないと競売には参加することすらできません。逆に、実力には疑問符が付いても、デベロッパー以外の資金力のある企業が競売に参加し、落札する例もあります。
以前、JVのアレンジメントをしていた頃、ある香港系デベロッパーに、10万㎡(地上50数階建)の複合ビルを建設できる広州市の一等地のプロジェクトを紹介したことがありました。先方からは、10万㎡では小さすぎて話にならない、最低でも100万㎡は欲しいと言われて唖然としたことを覚えています。しかし、冷静に考えると、実際、この企業は大連市で300万㎡以上の開発をする計画を発表していたので、担当者が話していたことは決して大げさではないと感じたものです。
このような豊富な資金力のある企業が高額で落札してきた結果、土地価格、ひいては住宅価格を上昇させたとして、3月中旬には、国有資産監督管理委員会は、不動産を本業としない中央政府直轄国有企業78企業グループに対し、不動産事業からの撤退を命じました。撤退を命じられた企業には、中国石油大手の中国石油化工(シノペック)、中国海運大手の中国遠洋などが含まれています。中国メディアは、78社が保有する不動産・土地使用権の簿価は1,000億元(約1兆3,500億円)前後あり、これらの土地が一度に放出されれば、中国の不動産市場が値崩れを起こす可能性もあると報道しています(この報道のとおりになれば、今年の秋頃には、バーゲンセールが始まるかもしれません)。
外灘最後の一等地を譲り受けた中国企業
 
6月の中旬、外灘最後の一等地と言われていた開発用地の権益の一部を、中国企業が購入しました。正確に言えば、開発権を有している会社の株式の約6割を譲り受けたのですが、このNEWSも、前述した「地王」ほどではないものの、大きく取り上げられました。
この開発用地は、外灘204区画と呼ばれるエリアで、敷地面積が22,465㎡あり、、オフィス・商業施設・ホテルなど建築が可能なエリアです。
購入したのは、SOHO中国有限公司(SOHO China Ltd.以下、SOHO中国と言います)というデベロッパーです。204区画全体で189,000㎡(内、地上面積は112,312㎡)の建物が建てられる予定ですが、このうち、株式譲渡により、81,000㎡(内、地上面積69,000㎡)の建物を開発できる権利を得ました。
SOHO中国は、香港メインボードに上場し、主に、北京で不動産開発を行っている中国大手不動産企業です。
204区画は、前述した8-1区画よりも外灘中心部に近いエリアに位置します。それだけでなく、豫園(明代に造られた、400年以上の歴史を持つ古典庭園。外灘と並ぶ上海の観光スポット)にも近く、陸家嘴の中心エリアを臨むことができる立地の良さがあります。ちなみに、204区画の対岸には、台湾系のデベロッパーが開発した湯臣一品(TOMSONRIVIERA)という超高級マンションがあります。販売単価は、建築面積ベースで15万元/㎡(約200万円/㎡)で、東京の高級マンションを上回ります。部屋面積は、400~1,200㎡ですから、総額は6,000万元~1億8,000万元(約8億円~24億円)です。いかに高級なマンションであるかがお分かりいただけると思います。
204区画譲渡のNEWSが注目されたのは、外灘の最後の一等地であったからのみではありません。開発権を有する会社の株を譲り受けたのが、SOHO中国であったからです。
SOHO中国は、北京でSOHOビル(複合施設)を多数建設し、成功を収めている企業です。SOHOとは、皆様ご存知のように、元々はsmall office/home office を意味しますが、SOHO中国が北京で展開するSOHOビルは、一般的なSOHOのイメージとは異なるものです。SOHOビルは、どれも個性的です。中には、日本でも有名な国際的な建築家である隈健吾氏が設計したものもあります。SOHOビルは、いわゆるSOHOとしての機能だけではなく、商業施設も擁し、ファッション性も備えています。SOHOビルに住むことは、若い人達への最新のライフスタイルの提案でもあり、北京ではこの提案が受け入れられていると言えます。
SOHO中国による上海不動産投資
 
SOHO中国は、これまで北京を中心に開発を進めていたのですが、昨年の8月に、上海中心部にある高層ビル「東海広場」をモルガンスタンレーから購入しました。これを足がかりに、上海進出を図ったのです。東海広場の購入により、SOHO中国が潤沢な資金力を誇示したことや、これだけの規模のアセットを中国国内企業が購入したことは、市場に大きなインパクトを与えました(これまでは、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックスなどといった外資系企業が上海の不動産に投資していたことが多かったのですが、これを機に、中国国内企業による不動産投資が目立つようになりました)。
東海広場は、52階建てのオフィスビルです。2006年4月までは不良債権としてポツンと建っていたものをモルガンスタンレーが2億5,000万ドル(約19億元)で購入し、竣工させたものです。不良債権と言っても、外壁の一部と内装ができていなかっただけで、52階までは建てられていましたので、非常に目立つ建物でもありました。モルガンスタンレーが購入するまでは、52階建てで規模が大きいこともあり、あのビルはこのまま不良債権として残ってしまうのではないかとさえ言われていました。ちなみに、SOHO中国が東海広場を購入した価格は24億5,000万元(約330億円)ですから、売却したモルガンスタンレーは、不良債権を竣工させるまでに要した内装工事費用などを差し引いても3、4億元のキャピタルゲインを得たことになります。
東海広場を購入した際、SOHO中国の代表である潘石屹氏は、上海に進出する理由を、上海は北京と共に成熟したエリアであるだけでなく、上海のオフィス、リテールは、住宅と比較してまだ価格が安いうえに、大きな滞在力があると話しており、次にどんなアセットへ投資するのかに注目が集まっていたのです。
ところで、話は少しそれますが、中国では、土地の価格が低いのか高いのかについては、日本のように、土地面積当りの単価で表示する習慣はありません。
通常は、楼面地価と言って、総建築面積当りの単価で表示します。
8-1区画の楼面地価が、34,100元/㎡であったのに対し、SOHO中国が購入した2-1区画の楼面地価は32,600元/㎡でした。昨年度の上海の住宅地の平均楼面地価は7,230元/㎡でしたので、この水準と比較すれば、外灘エリアの二つの楼面地価水準がどの程度の水準であるかお分かりいただけるかと思います。
SOHO中国の役員のひとりは、204区画の楼面地価は、購入する価格としては非常に妥当な価格であるとコメントしています。この価格は、SOHO中国が、この区画を譲り受ける為に譲渡主サイドと度重なる交渉を経たうえで成立したものであるようなので、苦労の末成立した価格に大変満足しているようにも思えます。私の目から見ても、このエリアのロケーションから考えると、この価格は決して高くはなく、むしろ安いくらいの価格であると感じます。
SOHO中国の役員は、このエリアの商業施設の現在の賃料水準は、専有面積ベースで約40~50元/㎡・日であるが、204区画プロジェクトが完成する予定の2013年下半期には、まだまだ賃料は上昇するであろうと予測しています。
SOHO中国の投資スタンス
数ヶ月前、SOHO中国の代表である潘石屹氏は、投資するならば北京より上海が良く、現在のところ、上海への投資額は会社全体の10%に満たないが、これから3、4年間は上海への投資を加速すると公表していました。今回の投資は、まさに狙いどおりの投資であったことでしょう。
潘石屹氏は、東海広場への投資と204区画への投資を明確に分けています。
東海広場は、上海中心部にあるオフィスであるのに対し、204区画は、周囲に交通の中枢とも言えるエリアや、豫園などがあり、旅行客など人の流れが多く、また、商業施設とオフィスなどの複合施設計画であるため、二つの異なるタイプの投資をしたと考えているのです。
上海での二つの異なるタイプの投資を経験したことで、SOHO中国は、自信を深めているようです。潘石屹氏は、204区画を譲り受けた後、現在ある140億元の現金のうち、昨年と同様に、今年も100億元程度の投資をしたいとコメントしていました。また、現在、政府の発令した新政策の影響で住宅マーケットが影響を受け、成約量が落ちているのは明らかであり、成約価格も下落する可能性がある一方で、新政策の商業不動産への影響は大きくないので、今後は、良い商業施設に投資したいとコメントしています。
SOHO中国が、次にターゲットにする上海の商業不動産が何なのかに注目したいと思っています。

 

雑誌【不動産鑑定9月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

8666 15芝田 優巳(しばた ゆうじ)
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早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp  までご自由にご連絡ください)

上海通信9月号記事

中国政府の威信をかけた不動産価格抑制策の効果
中国不動産はバブル? 
中国不動産がバブル状態にあると言われて久しいのですが、仮にバブルの状態であるとしても、中国では、まだ、バブルがはじけるような事態を経験したことはありません。バブル崩壊という苦い経験がある日本は、中国不動産について、安易に日本のバブルと結びつけたがる傾向にあるのではないかと感じます。
バブルの懸念があることを心配しているのは、政府やごくごくわずかな専門家などで、一般の中国の方は、中国の不動産価格は(少なくとも長い目で見れば)上がると考えています。
これは、①不動産業は、中国の経済の重要な推進役ともなっている為、政府が、不動産業に大きな打撃を加える(不動産価格を下げさせる)ようなことはしない、②中国の経済はまだまだ発展の余地があり、経済の発展と共に不動産価格は上昇する(GDPが毎年10%前後で推移していけば、それに伴い資産価値は上がる)、③中国の各都市はまだ発展途上で、開発の余地が多く残されている(中国では、現在の都市化率は低く、今後、都市化率は高くなるなどといわれます) などと考えられているからです。
私が、日本のバブル崩壊のことを話しても、ほとんどといってよいほど理解していただけません。この意味では、日本で昔あった、「土地神話」と同じ状況が中国にはあるといえます。
不動産市場の過熱抑制に乗り出した中国政府
 
2008年以降、金融危機の影響に対処するため、不動産業にてこ入れ策を実施した結果、2009年は住宅価格が上昇しました。
今年の6月末に公表された、外資系不動産コンサルティング会社ナイトフランクが世界47の国・地域を対象に行った調査によると、2009年に前年比で不動産価格が最も上昇したのは中国で、対前年比68%増であったそうです。
国務院は、こうした急激な価格上昇を抑制する為、今年の1月、新たな政策を発表しました。この政策は、「不動産市場の安定的かつ健全な発展を促進することに関する通知」(以下、国11条といいます)と題する不動産政策です。
国11条では、主に下記の3つのことが強調されています。
①     住宅供給の増加
保障住宅(福利政策的住宅)や、中小規模の一般分譲住宅の建設を加速させる内容となっています。
これまでの不動産政策は、住宅価格の抑制を主な目的とされるものが多かったといえますが、住宅市場の需給を改善させることにより、価格の上昇を抑制しようとしているところに特徴があります。
②     投機的不動産の購入の指導・抑制
   自己使用の住宅を購入する為のローンを支援する一方で、2戸目の住宅購入をする際、すでにローンを利用して住宅を購入した世帯は、ローンを申請する際の頭金比率は40%以上でなければならないことになりました。これは、2戸目の住宅購入を投資とみなし、ローンを厳格に管理することで投資を直接的に抑制しようとしたものです。
③     不動産市場管理の強化
   新たに市場に出される際に実施される土地の入札方法を改善することなどが盛り込まれています。これまでの入札方法は、最高価格を提示した企業が土地を落札しており、このことが土地価格の高騰を招いた要因の一つとされていました。従来の入札方法を見直すことで、土地価格の高騰ひいては住宅価格の高騰を抑制しようとしたものです。
 ところが、この政策の効果は非常に限定的でした。政策の発表後、住宅販売価格が下がるどころか、前年同月比10%を上回るハイペースで急騰しました(前ページの図を参照)。不動産価格の急騰は、マイホームを持ちたくても持てない一般庶民の不満を募らせるだけでなく、急激に価格が下落する際に中国経済が大きな打撃を受けるような事態を避けるべく、今年の4月、更なる不動産抑制策「一部の都市における住宅価格の急騰を断固として抑えることに関する通知」(以下、国10条といいます)を発表しました。
  国10条は、住宅ローンについての更なる規制や、不動産関連税制の導入などを含むもので、政府の、何としても不動産価格の高騰を抑制しようとする意気込みを感じさせるものです。
  住宅ローンについては、①建築面積90㎡以上の自己居住用住宅を購入する場合、頭金比率は30%を下回ってはならない、②2戸目の住宅を購入する場合、頭金の比率は50%を下回ってはならなず、貸出金利は、基準金利の1.1倍を下回ってはならない、③3戸目以上の住宅を購入する場合、頭金比率と貸出金利の水準を大幅に引き上げなければならない、という内容になっています。
  不動産関連税制については、不動産保有税を早急に導入することとされています。
  不動産保有税は、日本の固定資産税にあたるもので、上海では、万博終了後にも導入されるのではないかとメディアで報道されています。
  不動産保有税は、税率が住宅などの評価額の0.8%/年で、自己居住用住宅には課されず、それ以外の投資物件に課されるというのが大きな特徴です。不動産保有税が課さることを嫌い、投資物件を複数保有している投資家が物件を手放し、中古住宅の価格を抑制させようというのがねらいです。
国10条の効果は?
 国10条が発表されてから、政策の効果についての議論が活発に行われました。
 政策が発表された当初は、政府が不動産価格抑制にかつてないほどの力を入れていることから、不動産価格は調整局面に突入することが予測され、一般庶民にとっては、最後の住宅購入のチャンスであるともいわれました。
  政策の発表後、消費者の様子見ムードが広がり、成約量は急激に落ちましたが、デベロッパーは販売価格を下げないところが多く、統計上は、住宅販売価格は下がらず、むしろ上昇していました。
  政策が発表されてから1ケ月が経過した頃から、政策に対応するため、値下げをするデベロッパーが目立つようになりました。不動産大手企業である万科企業や緑地集団は、一部の新築販売物件を対象に15~20%という大幅な値下げを開始しました。
  6月中旬になると、高級住宅の成約価格が大幅に下落しているという報道が相次ぎ、次いで、今後、発展が見込まれるエリアとして価格が急激に上がっていた新興エリア(例えば、ディズニーランドの建設予定地である川沙というエリア)の新築販売価格が下落し、政府の政策の効果が徐々に現れてきたという報道が盛んに行われるようになりました。
   こうした、成約価格が下落しているという報道を裏付けるように、7月の上旬に発表された中国国家統計局の調査で、6月の中国主要70都市の不動産価格は前月比0.1%下落したことが分かりました(前年同月比では11.4%上昇。前年比伸び率の鈍化は2ケ月連続。図を参照。)。前月比でのマイナスは1年4ケ月ぶりで、価格の頭打ち感が出、不動産価格抑制策の効果があらためて示された形となりました。
   この統計結果を受け、一部メディアでは、不動産市場の過熱抑制策が取り消される見通しであるとも報じられましたが、中国政府は、不動産市場の過熱抑制策が撤回されるとのうわさを否定し、今後も抑制策を継続すると言明しました。
予測困難な不動産政策の効果
 
 前述したように、一般の中国人は、不動産の価格は下がることはないと考えています。ところが、最近の状況を見て、ひょっとすると価格はさらに調整し、相当下がるのではないかと考える中国人が、私の周りにもちらほら見られるようになりました。
2008年の秋頃から2009年の春先頃にかけて価格調整していたことがありましたが、このときは、価格は一時的に下がることはあってもいずれは上がるであろうと楽観的に考える人がほとんどであったと思います。今回は、価格が相当下がるのではないかと考える人がちらほら見かけられるほど、不動産価格抑制策が厳格であるともいえるでしょう。
 ちなみに、前回の調整局面時、2009年の初めには、大手の外資系不動産コンサルティング会社や金融機関が、不動産価格動向の予測をしていました。調整局面は相応に続き、回復するまでは時間がかかるというのが一般的な予測でしたが、ことごとく外れました。ある国際的な大手不動産コンサルティング会社では、2009年には10%、2010年には5%価格が下落し、11年までは価格が回復しないと予測していたほどです。
  ところが、実際には、2009年の3月頃から価格は回復し、現在の価格は、当時価格調整する前の水準を大きく上回る水準となっています。専門家でも判断を誤ってしまうほど、中国不動産の市場は予想しづらいのです。中国不動産市場は、政府の政策に左右されることも多く、この点が予想しづらくさせていますが、それだけではなく、不動産業の歴史が浅い中国では前例のない事態が起きたときに消費者がどう判断し、行動するのか予想しなければなりませんので、この点も市場を読みづらくしているといえるのではないでしょうか?
上海房地産展示交易会の視察
 
 上海では、今、まさに、前例のない事態になっています。
 最新の状況を肌で感じる為に、7月17日、「上海房地産展示交易会(上海不動産展示博覧会)」(以下、交易会といいます)に行ってきました。上海では、不動産をはじめとする展示会が盛んに行われています。不動産の展示会では、毎年、5月と10月に行われる展示会が最も有名で参加者が多いのですが、今回の展示会(交易会)は、5月、10月に行われる展示会とは同じ会場であるものの、例年、参加者はそれほど多くはありません。展示会には、多くのデベロッパーが参加し、自社の開発マンションなどを展示し、来場者に販売します。参加者は、気に入った物件があれば、デバロッパーが準備しているバスに乗り、物件を見に行くこともできます。展示会を視察することは、デベロッパーの参加数や来場者数、どんな物件に参加者が興味を持っているのかを直接見ることにより、その時々の不動産業界の状況を知ることができる、非常に良い機会でもあります。
   交易会の参加者は、予想どおり少ないものでした。参加者よりデベロッパーの社員数が多かったと書いている新聞もあったほどです。
   今回の参加デベロッパーの販売方法で特徴的だったのは、定価の5%前後の値引きをして販売(優遇販売)している会社が多かったことです。値引きなどの優遇販売は、交易会が開催されている3日間限定であることが多い為、今回、優遇販売を目当てに来場した人も多かったものと思われます。優遇販売としては、ほかに、「2房変3房」(2LDKを買えばもう1部屋をサービスし、3LDKになる。要は、3LDKを、2LDKを購入するのと同様の価格で購入できる、という意味です)などといって、見かけ上の販売単価は下げないものの、実質的に値引きを行っている物件も散見されました。この手の物件には、市の中心部から地下鉄で30分程度以上かかるエリア(上海の郊外エリア)に所在するものが多く見受けられました。2008年の秋頃から始まった前回の価格調整時には、優遇販売として、部屋を買えば車がプレゼントされるというものや、5%のみならず20%以上値下げするデベロッパーも少なくなかったことから考えると、現在は、派手な優遇販売は行われず、デベロッパーも比較的冷静であるといえます。デベロッパーがまだ冷静でいられるのは、2009年には全般的に販売が好調であったために資金繰りにも余裕があるからなのかもしれません。逆に、今の段階で大きく値下げしている企業は、資金繰りに不安を抱いているともいえるかもしれません。
今後の不動産価格の見通し
   現状では、販売価格はそれほど下がっていないものの、成約量は大幅に減っています。これは、資金繰りに窮しない多くのデベロッパーが大幅な値下げをしてまで売りたくないと考えているのに対し、消費者は、価格が下がる(調整が続く)可能性があり現在は様子を見たいと考えているからと思われます。現在購入を考えているのは、投資目的ではなく、実需で部屋が必要な方達が中心であるといえます。実需の代表的な例としてこちらでよく言われるのが、首套房(部屋の一次取得)、婚房(結婚に備えて購入する部屋。上海では、結婚前に部屋を購入するのが一般的です。これまで、部屋を持つことができるほどの経済力がない男性は、結婚するのはまだ早いと考えられてきました)、学区房(子供を良い学校に入学させる為に、良い学校がある学区内で購入する部屋)などです。
こう考えると、これから1、2ケ月間は膠着状態は続き、価格もあまり下がらない可能性は低くはないのではないでしょうか?
   現在とあまり変わらない(思うように販売価格が下がらない)状況が続いたとき、政府が、次に、いつ、どういう手を打つのかは非常に興味深いところです。

雑誌【不動産鑑定6月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

15 芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください)

上海通信6月号記事

今回から、万博開催を間近に控え、より活気付く上海から、上海の不動産に関するレポートをお伝え致します。
成長が続く中国、とりわけ上海を語る上で欠かせないのが、国家級開発区の中でも唯一金融貿易区として指定されている、陸家嘴金融貿易区(以下、「陸家嘴」と略します)です。陸家嘴(Lujiazui)と言ってピンと来ない方でも、森ビルが開発した上海環球金融中心(Shanghai World FinancialCenter)、東方明珠塔(Oriental Pearl Tower、別名「テレビ搭」)があるエリアと言えばお分かりいただける方も多いのではないでしょうか?
上海は、中国経済を牽引する最前線の都市として、1990年代前半から超高層ビルの建設気運が高まり、現在では、20階以上の高層ビルが4,000棟を越える、世界で最も高層ビルが密集する都市となっています。中でも、陸家嘴は、1998年竣工の「金茂大厦」(Jin Mao Building 420.5m)、2008年竣工の「上海環球金融中心」(以下、「SWFC」と言います。492m)など、上海を代表する超高層ビルが建ち並び、銀行・証券会社などの金融機関を中心とし、法律・会計系コンサルティングファーム、シンクタンク、商社など、多国籍企業が集積するエリアとなっています。
中国最高峰となる上海中心大廈
先日、陸家嘴で開発が進む上海中心大廈(Shanghai Tower。以下、「上海中心」と略します)の基礎工事が終えたというNEWSがありました。
上海中心は、階数が128階、高さは632m、延床面積は約56万㎡(内、地下部分は約18万㎡)のオフィスビルで、2014年に竣工が予定されています。上海中心は、前述した金茂大廈の南隣、SWFCの西隣に位置し、完成すれば、3棟で「黄金のトライアングル」を形成することになります。
この上海中心は、世界的な金融危機が進むさなか、内需拡大に力を入れる政府の方針を示す象徴として、総事業費148億元(約2,000億円)をかけ、2008年11月に着工しました。完成すれば中国一の高さを誇る建物の基礎工事をわずか1年足らずで終えてしまうというのは、上海のスピード感に他なりません。おおざっぱな言い方をすれば、中国の工事のスピードは日本の2倍です。これは、中国での工事が24時間体制で行われることも珍しくないからです。24時間体制での作業が、発展する上海を支えていると言っても過言ではありません。上海中心が着工されたのが、SWFCが竣工して間もない時期であった為、ここ上海でも、よく、SWFCに対抗して上海中心が建てられることになったと思われる方も多いようなのですが、実は、1993年年に陸家嘴金融貿易区の構想ができた時には、すでに、3棟の超高層ビルを建てる計画ができあがっていました。つまり、上海中心は、当初から計画されていた3棟目の超高層ビルに他なりません。
上海中心は、アメリカの世界的な設計事務所 ゲンスラー社による設計で、中国のダイナミックな未来を表現する為、昇り竜をイメージしたデザインとなっています。
ゲンスラー社の設計案は、ガラス・カーテンウォールで外側を覆われたビルが螺旋状にねじれながら高くなってゆくという案です。構造は、9つの円柱状の建物が垂直に積み重なり、さらにこれらを二重のガラスのファサードが覆うものになっています。内側のガラス・カーテンウォールが建物を囲み、外側のガラス・カーテンウォールが螺旋状に上昇するように全体を覆うデザインは、まさに昇り竜と言っても良いかもしれません。内側と外側のガラス・カーテンウォールの間には、地表から上層階まで異なる高さに9つのアトリウムがあり、一般市民に開放される予定になっています。また、建物の下層部には商業施設やイベントスペースなどが設けられ、最上部には展望台が設けられる予定になっています。
国務院(中国の最高行政機関。日本の内閣に相当します)は、2020年までに上海市を経済力と人民元の国際的地位に見合った国際金融センターを構築することを提起しています。上海万博後の、上海、中国の経済はどうなってしまうのか?上海万博後は、経済成長に歯止めがかかるのではないか?はたまた、不動産バブルがはじけるのではないか?ということを幾度となく聞かれましたが、上海万博は、あくまでも上海、中国の経済成長の通過点にすぎず、上海、中国の発展はまだまだ続くと考えています。上海を国際金融センターにするという構想提起は、万博開催には飽き足らず、既に先を見据えている(成長を止めない)というメッセージではないでしょうか?上海中心の昇り竜をイメージしたデザインは、上海の発展のシンボルであり、2020年には、上海中心は、国際金融センターとしての上海の中心的役割を担っていることでしょう。
香港のランドマークが上海に登場?
上海中心は、中国の政府系企業による開発ですが、陸家嘴の開発は、外資系デベロッパーの進出にも支えられています。
外資系デベロッパーによる開発の目玉として今話題となっているのが、上海国金中心(Shanghai International Finance Centre。以下、「上海IFC」と略します)です。
上海IFCは、香港で最も高いビル 香港International Finance Centre を開発した、香港最大級のデベロッパー新鴻基地産(SunHung Kai Properties)が開発を進めているプロジェクトです。香港のランドマークと言えるIFCが陸家嘴の中心部(地下鉄2号線「陸家嘴」駅の目の前)にできると言えば、そのインパクトの大きさを想像していただくことができるでしょう。
上海IFCは、高さ260mと250mのツインタワーと、別棟(85m)で構成される、延床面積約40万㎡の複合商業施設で、今年から順次完成する予定になっています。
延床40万㎡の内訳は、オフィス21万㎡、商業施設10万㎡、ホテル9万㎡です。
オフィス部分(全部ではありません)は、HSBCが20フロアーを使用し、中国総本部を置くことになっており、ビル命名権も取得しています。ホテルには、リッツカールトンとWホテルが入居することになっています。商業施設には、高級ブランドが数多く出展すると言われ、上海IFCの隣に位置する上海最大の商業施設正大広場と共に陸家嘴最大の商業エリアを形成することは間違いないでしょう。
芸術作品とも呼べる陸家嘴のオフィスビル
陸家嘴に建ち並ぶオフィスビルは皆個性的なものばかりです。
これも、日本と比べると自己主張の強いお国柄でしょうか?
ただし、これほど個性的なビルが並んでも違和感がなく、むしろ、個性的なビル群を全体として見るとしっくりくるのは私だけではないでしょう。
個性的なオフィスビルの中には、派手さのみが目立つものもありますが、芸術作品とも呼べるようなオフィスビルもあります。それもそのはずで、陸家嘴のオフィスビルは、世界的の著名な設計事務所が設立したものも多く、陸家嘴は、設計技術を競う場ともなっているのです。
SWFCのデザインは、シンプルでもありますが洗練されていると私自身は思うのですが、上海では、「巨大な栓抜き」とも言われています。細長い構造のうえ、最上部に四角い穴がある為、親しみを込めてそう呼ばれています。ちなみに、最上部には、世界で最も高い位置にある展望台があり、オープン以来、大変な人気です。
日系企業などが設計したオフィスビルもあります。
陸家嘴でも一際目立つ中銀大廈(Bank of China Tower、別名「中国銀行ビル」 43階建)や、時代金融中心(OneLujiazui 47階建)は、日建設計が設計したものです。
中銀大廈と言えば、映画ミッション・インポッシブルⅢで、トムクルーズが、隣の浦東発展銀行ビルへと飛び移る名シーンが撮影されたビルでもあります。中銀大廈は、陸家嘴で開発されたオフィスビルがまだ数少なかった2000年に竣工しました。陸家嘴で開発が始って数本目のビルの設計を日系企業が行ったというのは、日本人として誇らしく思えてきます。
また、上海銀行の本社ビルでもある上海銀行大廈(Bankof ShanghaiTower 46階建)は、東京都庁を設計した丹下健三氏が設計したものです。
エントランスは吹き抜けとなっており、ゴージャスな作りは、都庁内のエントランスを彷彿とさせます。外観も、都庁のデザインとどことなく似ています。
上海のオフィスマーケット
これだけの高層ビルが建ち並ぶ、陸家嘴、上海でのオフィスマーケットはどうなっているのか?と興味を持たれる方もいるかと思います。
ここで、上海のオフィスマーケットを見ることにします。
まず、上海市内全体のオフィスマーケットなのですが、昨年度のグレードAオフィスの賃料は下落傾向にありましたが、昨年度の第四半期に下げ止まり、今年に入り、若干上昇しています(図表1)。これは、中国の景気回復傾向が鮮明になるにつれ、金融危機に事業の縮小を図っていた外資系企業が攻勢に転じる動きがあったり、上海への進出企業が増えていることなどが影響しているからであると考えられます。
次に、上海の主要エリアのグレードAオフィスの賃料を見ることにします。図表2では、上海の主要エリア毎の賃料をグラフにしていますが、主要エリアの平均賃料が6.9元/㎡・日であるのに対し、陸家嘴エリアは6.8元/㎡・日となり、平均賃料を下回っています。金茂大廈、SWFCを始め、上海随一のグレードAオフィス集積エリアであるのに何故?と思われるでしょう。
数年前までは、陸家嘴エリアが上海で最も賃料が高く、金融機関など賃料負担能力が極めて高いテナントでしか入居できませんでした。稼働率も高く、オーナーサイドも強気の賃料設定をしており、契約更新時には、オーナーから要求される賃料を払えずに退去せざるを得ないという企業も数多くありました(中国では、日本のような借家人を保護する制度がありません。したがい、貸主が有利で、契約更新時には、貸主は簡単に既存テナントが追い出すことができます)。現在では、陸家嘴エリアに大規模オフィスビルの新規供給が相次いだことから稼働率も低下し、オーナーも賃料を下げてでもテナントを確保に努めている為、賃料相場も下落しました。図表3にあるように、稼働率は、主要エリアで最も低くなっています。ただし、今年に入ってからは、他の主要エリアと同様、賃料水準・稼働率とも若干上昇しています。
陸家嘴の今後のオフィスマーケットはどうなるのでしょうか?
ほぼ間違いなくマーケットが回復し、将来は、再び、上海で最も賃料が高いエリアになると考えられます。陸家嘴は、前述した上海国際金融センター構想の中心部であり、今後も多国籍企業の本部が移転・新設される動きが続くと予想されるからです。政策が決まれば、その政策どおりに物事が進められる-。当たり前と言えば当たり前のことなのでしょうが、ここ中国では、大きい政策ほど、政策が遵守される確率は高くなり、政策が不動産マーケットに与える影響が大きくなります(今年に入り、中国のハワイと言われる海南島を国際的なリゾート地として開発を進めていくと政府が発表して以来、海南島の不動産価格は1ケ月で倍になったというNEWSもありました)。
今後も、国際金融センターを目指して発展を続ける上海から、HOTな情報をお届けしたいと思います。

雑誌【不動産鑑定7月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

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芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください)。
上海通信7月号記事
5月中旬、「ユニクロ」(ファーストリテイリングのカジュアル衣料品店)の世界最大のグローバル旗艦店「上海 南京西路店」(店舗面積は、3,600㎡。新宿高島屋にある日本国内最大の店舗が1,650㎡ですから、規模は2倍以上です)が、上海の南京西路にオープンしました。グローバル旗艦店は、ニューヨーク、パリ、ロンドンに続く4店舗目であるようで、この店舗では、世界最大の売上を目指しているようです。
報道で既にご存知の方も多いかと思いますが、開店当日は、開店前に1,200人の行列ができるという大変な人気です。中国人は、行列を作ってまで買い物をするという習慣があまりないものですから、現地で暮らす私にとっても驚きでした。
ユニクロの中国進出は2001年ですが、これまで順風満帆であったわけではありません。08年時点では、中国の店舗は11店舗にとどまっていましたが、所得水準の向上と、ここ数年のファッションブームの追い風を受けるなどして店舗拡大を進めた結果、今回、中国での65店舗目の出店となりました。
中国のユニクロの店舗は、日本のユニクロの店舗そのものです。店舗内装デザイン、店員の服装(ユニクロの商品を着ています)、接客態度など、日本の店舗をそのまま中国に持ってきていると言っても過言ではありません。特に接客態度は素晴らしく、サービス水準が高いとは言えないここ上海で、世界で一番うるさいとも言われる日本人へのサービスと同様の水準で、顧客に対応しています。日本流にこだわりつつ中国人の消費者の心を掴んで今回の旗艦店出店まで至らしめた企業努力には頭が下がります。
高級ファッションストリート南京西路
ユニクロの旗艦店は、南京西路(West Nanjing Road)という所に位置します。南京西路というのは、上海で最も高級なファッションストリートで、上海中心部を東西に横断する、全長約2kmの商業エリアとなっています。このエリアには、上海で最もファッション感度の高い人達が訪れます。このエリアには、日系の梅龍鎮伊勢丹(ユニクロ旗艦店とは目と鼻の先です)や香港系の久光百貨(久光そごう百貨店)という高級百貨店の他、グレードAオフィス、高級ホテルが建ち並んでいます。グレードAオフィの下層には、恒隆広場(Plaza66)、上海商城(ポートマンリッツカールトン内の商業施設)、中信泰富広場(Citic Square)や金鷹国際(Golden Eagle)など、高級ブランドショップを多く抱える、上海を代表するショッピングモールがあります。
南京西路には、上海の旗艦店を構える高級ブランドショップが多くあり、中でも、ルイビトン(恒隆広場)やグッチ(金鷹国際)の旗艦店は通行人の目を引きます。日本では、今話題の某女優さんの銀座の美容クリニックの広告が話題になりましたが、インパクトはその比ではありません。個性が強い中国人気質のせいもあるのでしょうが、各ブランドが、いかに中国市場に力を入れているかが分かります。
ルイビトンの広告は、外見の派手さだけが先行するようにも思えますが、ルイビトン恒隆広場店は、土日には入場規制がかけられることもある程の人気です。日本では、ベルサーチが事実上撤退するなど海外高級ブランド市場が縮小傾向にありますが、今後上海(中国)では、海外高級ブランド市場が拡大していくものと予想されています。
中国市場研究グループ(CMR)の代表者の話では、中国の消費の中心は32歳以下の層にあるようであり、また、米コンサルティング会社であるマッキンゼー社のレポートでは、中国の富裕層は、日本やアメリカと比べて20歳若く、45歳以下が占める割合が80%にものぼるそうです。こうした購買力の高い層が上海の消費市場を支えているのでしょう。ユニクロの旗艦店の開店前、上海市内のホテルで会見したファーストリテイリング社の柳井正会長が「上海はアジアにとどまらず世界の中心になり、中国は米国や欧州と肩を並べる消費市場になる」と期待感を込めておっしゃっていたのもうなずける気がします。
高級ブランドを購入するのは、いわゆる富裕層の方も多いのでしょうが、ここ上海では、ファッションにも気を配る、中国で最もファッショナブルな人(特に女性)が多く、このような人達も上海の消費市場を牽引していると言っても良いと思います。
日本でも話題の、第二世代SPA(Specialty Store of Private Label Apparel)、スウェーデンのカジュアル衣料専門店「H&M(ヘネス・アンド・モーリッツ)」や、スペインの「ZARA」は、上海でも店舗の出店スピードを加速させています。H&Mは、08年の9月に日本(銀座)に初出店し、開店前には2~3,000人の行列ができる程の盛況でありましたが、上海では、その1年程前に既に1号店舗ができていました。
価格帯、商品の品質、ファッション性などを考えれば、ユニクロにとっては、この第二世代ショップが競合する相手となります。ユニクロの商品は、日本では、品質の良さなどからも人気がありますが、リーズナブルな価格設定も人気の要因のひとつと言えると思います。
実は、上海のユニクロの商品は、日本とそれほど変わりのない価格設定となっています。中国人から見ればこの価格設定は決して安くはありません(中国で最も所得水準の高い上海でも、1人当たりGDPは約1万ドルです。これは、日本の1人当たりGDPの3割程度の水準です)。上海では、ユニクロの商品は、品質の良い日本ブランドの商品として、中間層以上をターゲットにして売られています。
 
ユニクロの旗艦店のある「南京西路」駅周辺エリア
ユニクロの旗艦店があるのは、南京西路の中でも、ユニークな場所にあります。地下鉄2号線「南京西路」駅を下車し、すぐのところにあります。読者の皆さんは、どこがユニークなの?と思われることと思います。実は、南京西路の商業エリアは、道路沿いに商圏を形成しており、これまで、「南京西路」駅の周辺自体は、南京西路の路線沿いの商業エリアの中としては、あまり華やかとは言えませんでした。「南京西路」駅周辺は、高級な商業エリアというよりは、南京西路の1本南側の呉江路にある「小吃街」(軽食街。歩行者天国になっています)がある庶民的なエリアとして知られていました。かつては、小吃街は、小籠包と生煎(焼き小籠包)や手羽焼き、タコの串焼きなどの露店が所狭しと建ち並び、連日大勢の人で賑わっていました。現在では、半分が若者向けファッションモール 四季坊(In Point)の開業と同時にリニューアルオープンし、残りの半分は、閉鎖され改装が進められています。
呉江路は、大勢の人で賑わう人気のスポットではありましたが、一方では、交通渋滞、治安の悪化、火事や食中毒の危険性などがあり、付近の居住環境を悪化させていました。このことが原因で、上海市政府主導で改装が進められています。昔ながらの庶民的なエリアが変わってしまうのは、都市化・近代化の流れで避けられないことなのでしょうが、寂しい気もします。
四季坊の開業は、かつての呉江路のイメージを払拭しました。呉江路は、学生やカップルが訪れるオシャレスポットとして生まれ変わり、毎週様々なイベントが行われ、改装前と同様に多くの人で賑わっています。四季坊には、10代、20代向けの洋服や雑貨、カフェ、スイーツの店舗、アメリカのMLB専門店など、約120店舗が出店しています。店舗は、中国系はもちろんのこと、欧米系や日系の店舗も進出しており、バラエティーに富んでいます。飲食店舗では、日本でも大変な人気の「クリスピードーナッツ」も出店し、イギリス系の「コスタコーヒー(Costa Coffee)」の他、現在、上海で急拡大中の台湾系のパン屋「Cafe85℃」、日系ではカレーハウス「COCO壱番」や牛丼の「吉野家」が出店しています。
四季坊がオープンしたのが一昨年の夏ですが、続いて、一昨年末に「南京西路」駅の真上(四季坊の前方)にイギリス系のスーパーマーケット マークスアンドスペンサー(Marks&Spencer)が中国初の店舗をオープンさせました。
マークスアンドスペンサーは、イギリス最大手の小売チェーンで、衣料品から食品までを扱う、中所得者と高所得者の間にある層に人気のあるお店です。
かつて小吃街として有名であった「南京西路」駅周辺が、再開発により若者が集まるオシャレスポットへと変貌を遂げてきた中、満を持して登場したのがユニクロの旗艦店と言えます。ユニクロの出店は、「南京西路」駅周辺エリアの変貌を上海市民に強烈にアピールし、このエリアの集客力をより高めるために一役買っています。
既に銀座並みとなった上海中心部の賃料水準
最近、上海に進出して、物販・飲食など店舗を出店したいという日系企業が増えています。
進出を考える際、まず、驚かれるのが賃料の高さです。
図1では、上海主要商業エリアの賃料水準を確認することができます。これによれば、ユニクロの旗艦店がある南京西路エリアの平均賃料(建築面積ベースで算定)は、75.5元/㎡・日(月額約100,000円/坪)です。上海エリアでは最も高く、上海主要エリアの平均賃料 50.76元/㎡・日(月額約69,000円/坪)の1.5倍以上の賃料水準です。南京西路の賃料は、既に銀座に匹敵する賃料水準となっています。
これだけ賃料水準が高いにもかかわらず、ユニクロの旗艦店が所在する静安区の店舗空室率は、わずか2%です(図2を参照)。
上海、特に南京西路エリアには、外資系のアパレル・化粧品・嗜好品などの有名ブランドや外食産業が次々と進出しています。空きスペースが非常に少なく、立地条件の良い1階を探しても、ほとんど満室であるため、空きスペースを探すことは至難の業です。
南京西路に限らず、上海では完全な貸手市場であるため、賃料は、基本的には、右肩上がりで上昇しています(図3を参照)。
日本とは異なる商業施設事情
 
上海で初めて店舗を探されようという方は、日本との違いにとまどうことが多いようです。
それは、前述したように、賃料が高いことや、一見すると、良い店舗スペースが簡単に探せそうに見えて、実は、なかなか簡単には良い店舗スペースが見つからない、ということです。
上海の中心部では、賃料が高くなってはいるものの、日本と比べると人件費が安いので、トータルで考えるとコストは低くなり、良い店舗スペースさえ確保できれば、利益を上げられる可能性もでてきます。
しかし、肝心の店舗が見つけられなければ、開業にこぎつけることはできません。
簡単にスペースが見つからないのは、南京西路など上海の主要エリアの建物は、政府系企業や国有企業が保有していることも少なくないというのも理由のひとつです。たまたま空きスペースがあり、オーナーを訪ねてみると、オーナーが政府系企業で、コネクションがないから入居させてもらえない、ということもあります。また、立地の良い場所で建設が行われているショッピングモールに入居しようと問い合わせしたところ、既にコネクションのある企業で埋まってしまい、入居できないというケースもよくあります。要は、進出する企業が、相当のネームバリューがある企業であるなどの特徴がない限り、何らかのコネクションがないと、本当に良い場所を押さえるのは難しいのです。逆に、ネームバリューがある企業や、ユニークで新しいコンセプトを持った企業であれば、政府や政府系企業にもアピールしやすく、入居を歓迎されることもあります。
中国では、会社、店舗を設立するのにも、政府の許認可が必要です。
許認可の基準は、地方政府により異なります。また、社会情勢などにより異なります。例えば、今年に入り、ある日系の美容(エステ)関係の会社が店舗を探していたところ、上海万博が終わるまでは、新たな店舗は美容の営業許可が下りないという理由で、入居を断られました。その後、幾つか店舗候補を見つけ、オーナーとも条件面で合意していたものの、政府の許認可機関の了承を得ることができず、入居を断念せざるを得ませんでした。政府関係者によれば、中国では、エステとして営業許可を出した場合、店内でいかがわしい行為を行うようなお店もごくわずかではあるがあるようなので、お店を開業させてトラブルが発生するリスクを抑えるために、万博期間中は、美容の営業許可を下ろさないとのことでした。
中国人の嗜好に合わせる為の工夫
上海には、約50,000人の日本人が住んでおり、世界で最も日本人が多く住む海外都市となっています。
街のあちこちに、日系の飲食店舗があります。
しかし、日本人が多いからという単純な理由であまり準備をしないでお店を開業しても、なかなかうまくはいかないようです。日系の各社も、日本とは異なる上海人の嗜好に合わせるなど、日本の店舗運営をアジャストしています。
例えば、日本では、ドーナッツを店内で食べるよりテイクアウトする人の方が多い為、お店の面積は小さいのですが、中国では、逆に、テイクアウトするより店内で食べる人が多いため、上海のミスタードーナツの店舗は、日本の何倍もの広さがあります。
また、上海では、1店舗に数種類のメニューしかないようなお店はほとんどありません。どのお店に行っても、メニューは豊富です。日本では、牛丼の吉野家と言えば、「牛丼一筋」と宣伝しているように、牛丼を中心としたメニューになっていますが、上海にある吉野家は、牛丼以外のメニューも豊富にあります。店内は、日本で見られるカウンター式の店舗ではなく、まるでファミリーレストランのような店舗になっています。
カレーハウス「COCO壱番」では、日本式のサービスを提供するために、日本に留学している際、日本のCOCO壱番でアルバイト経験がある中国人を社員として採用するなどしているそうです。
飲食店舗とは異なりますが、ユニクロも、店舗スペース確保の問題をクリアーし、一方で、日本とは異なる現地の事情に合わせる為に試行錯誤を繰り返したのだと思います。
今回の旗艦店を開店するまでのこれまでのご苦労は、生半可なものではなかったと考えると、改めて敬意を払わざるを得ません。

 

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