雑誌【不動産鑑定9月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

8666 15芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp  までご自由にご連絡ください)

上海通信9月号記事

中国政府の威信をかけた不動産価格抑制策の効果
中国不動産はバブル? 
中国不動産がバブル状態にあると言われて久しいのですが、仮にバブルの状態であるとしても、中国では、まだ、バブルがはじけるような事態を経験したことはありません。バブル崩壊という苦い経験がある日本は、中国不動産について、安易に日本のバブルと結びつけたがる傾向にあるのではないかと感じます。
バブルの懸念があることを心配しているのは、政府やごくごくわずかな専門家などで、一般の中国の方は、中国の不動産価格は(少なくとも長い目で見れば)上がると考えています。
これは、①不動産業は、中国の経済の重要な推進役ともなっている為、政府が、不動産業に大きな打撃を加える(不動産価格を下げさせる)ようなことはしない、②中国の経済はまだまだ発展の余地があり、経済の発展と共に不動産価格は上昇する(GDPが毎年10%前後で推移していけば、それに伴い資産価値は上がる)、③中国の各都市はまだ発展途上で、開発の余地が多く残されている(中国では、現在の都市化率は低く、今後、都市化率は高くなるなどといわれます) などと考えられているからです。
私が、日本のバブル崩壊のことを話しても、ほとんどといってよいほど理解していただけません。この意味では、日本で昔あった、「土地神話」と同じ状況が中国にはあるといえます。
不動産市場の過熱抑制に乗り出した中国政府
 
2008年以降、金融危機の影響に対処するため、不動産業にてこ入れ策を実施した結果、2009年は住宅価格が上昇しました。
今年の6月末に公表された、外資系不動産コンサルティング会社ナイトフランクが世界47の国・地域を対象に行った調査によると、2009年に前年比で不動産価格が最も上昇したのは中国で、対前年比68%増であったそうです。
国務院は、こうした急激な価格上昇を抑制する為、今年の1月、新たな政策を発表しました。この政策は、「不動産市場の安定的かつ健全な発展を促進することに関する通知」(以下、国11条といいます)と題する不動産政策です。
国11条では、主に下記の3つのことが強調されています。
①     住宅供給の増加
保障住宅(福利政策的住宅)や、中小規模の一般分譲住宅の建設を加速させる内容となっています。
これまでの不動産政策は、住宅価格の抑制を主な目的とされるものが多かったといえますが、住宅市場の需給を改善させることにより、価格の上昇を抑制しようとしているところに特徴があります。
②     投機的不動産の購入の指導・抑制
   自己使用の住宅を購入する為のローンを支援する一方で、2戸目の住宅購入をする際、すでにローンを利用して住宅を購入した世帯は、ローンを申請する際の頭金比率は40%以上でなければならないことになりました。これは、2戸目の住宅購入を投資とみなし、ローンを厳格に管理することで投資を直接的に抑制しようとしたものです。
③     不動産市場管理の強化
   新たに市場に出される際に実施される土地の入札方法を改善することなどが盛り込まれています。これまでの入札方法は、最高価格を提示した企業が土地を落札しており、このことが土地価格の高騰を招いた要因の一つとされていました。従来の入札方法を見直すことで、土地価格の高騰ひいては住宅価格の高騰を抑制しようとしたものです。
 ところが、この政策の効果は非常に限定的でした。政策の発表後、住宅販売価格が下がるどころか、前年同月比10%を上回るハイペースで急騰しました(前ページの図を参照)。不動産価格の急騰は、マイホームを持ちたくても持てない一般庶民の不満を募らせるだけでなく、急激に価格が下落する際に中国経済が大きな打撃を受けるような事態を避けるべく、今年の4月、更なる不動産抑制策「一部の都市における住宅価格の急騰を断固として抑えることに関する通知」(以下、国10条といいます)を発表しました。
  国10条は、住宅ローンについての更なる規制や、不動産関連税制の導入などを含むもので、政府の、何としても不動産価格の高騰を抑制しようとする意気込みを感じさせるものです。
  住宅ローンについては、①建築面積90㎡以上の自己居住用住宅を購入する場合、頭金比率は30%を下回ってはならない、②2戸目の住宅を購入する場合、頭金の比率は50%を下回ってはならなず、貸出金利は、基準金利の1.1倍を下回ってはならない、③3戸目以上の住宅を購入する場合、頭金比率と貸出金利の水準を大幅に引き上げなければならない、という内容になっています。
  不動産関連税制については、不動産保有税を早急に導入することとされています。
  不動産保有税は、日本の固定資産税にあたるもので、上海では、万博終了後にも導入されるのではないかとメディアで報道されています。
  不動産保有税は、税率が住宅などの評価額の0.8%/年で、自己居住用住宅には課されず、それ以外の投資物件に課されるというのが大きな特徴です。不動産保有税が課さることを嫌い、投資物件を複数保有している投資家が物件を手放し、中古住宅の価格を抑制させようというのがねらいです。
国10条の効果は?
 国10条が発表されてから、政策の効果についての議論が活発に行われました。
 政策が発表された当初は、政府が不動産価格抑制にかつてないほどの力を入れていることから、不動産価格は調整局面に突入することが予測され、一般庶民にとっては、最後の住宅購入のチャンスであるともいわれました。
  政策の発表後、消費者の様子見ムードが広がり、成約量は急激に落ちましたが、デベロッパーは販売価格を下げないところが多く、統計上は、住宅販売価格は下がらず、むしろ上昇していました。
  政策が発表されてから1ケ月が経過した頃から、政策に対応するため、値下げをするデベロッパーが目立つようになりました。不動産大手企業である万科企業や緑地集団は、一部の新築販売物件を対象に15~20%という大幅な値下げを開始しました。
  6月中旬になると、高級住宅の成約価格が大幅に下落しているという報道が相次ぎ、次いで、今後、発展が見込まれるエリアとして価格が急激に上がっていた新興エリア(例えば、ディズニーランドの建設予定地である川沙というエリア)の新築販売価格が下落し、政府の政策の効果が徐々に現れてきたという報道が盛んに行われるようになりました。
   こうした、成約価格が下落しているという報道を裏付けるように、7月の上旬に発表された中国国家統計局の調査で、6月の中国主要70都市の不動産価格は前月比0.1%下落したことが分かりました(前年同月比では11.4%上昇。前年比伸び率の鈍化は2ケ月連続。図を参照。)。前月比でのマイナスは1年4ケ月ぶりで、価格の頭打ち感が出、不動産価格抑制策の効果があらためて示された形となりました。
   この統計結果を受け、一部メディアでは、不動産市場の過熱抑制策が取り消される見通しであるとも報じられましたが、中国政府は、不動産市場の過熱抑制策が撤回されるとのうわさを否定し、今後も抑制策を継続すると言明しました。
予測困難な不動産政策の効果
 
 前述したように、一般の中国人は、不動産の価格は下がることはないと考えています。ところが、最近の状況を見て、ひょっとすると価格はさらに調整し、相当下がるのではないかと考える中国人が、私の周りにもちらほら見られるようになりました。
2008年の秋頃から2009年の春先頃にかけて価格調整していたことがありましたが、このときは、価格は一時的に下がることはあってもいずれは上がるであろうと楽観的に考える人がほとんどであったと思います。今回は、価格が相当下がるのではないかと考える人がちらほら見かけられるほど、不動産価格抑制策が厳格であるともいえるでしょう。
 ちなみに、前回の調整局面時、2009年の初めには、大手の外資系不動産コンサルティング会社や金融機関が、不動産価格動向の予測をしていました。調整局面は相応に続き、回復するまでは時間がかかるというのが一般的な予測でしたが、ことごとく外れました。ある国際的な大手不動産コンサルティング会社では、2009年には10%、2010年には5%価格が下落し、11年までは価格が回復しないと予測していたほどです。
  ところが、実際には、2009年の3月頃から価格は回復し、現在の価格は、当時価格調整する前の水準を大きく上回る水準となっています。専門家でも判断を誤ってしまうほど、中国不動産の市場は予想しづらいのです。中国不動産市場は、政府の政策に左右されることも多く、この点が予想しづらくさせていますが、それだけではなく、不動産業の歴史が浅い中国では前例のない事態が起きたときに消費者がどう判断し、行動するのか予想しなければなりませんので、この点も市場を読みづらくしているといえるのではないでしょうか?
上海房地産展示交易会の視察
 
 上海では、今、まさに、前例のない事態になっています。
 最新の状況を肌で感じる為に、7月17日、「上海房地産展示交易会(上海不動産展示博覧会)」(以下、交易会といいます)に行ってきました。上海では、不動産をはじめとする展示会が盛んに行われています。不動産の展示会では、毎年、5月と10月に行われる展示会が最も有名で参加者が多いのですが、今回の展示会(交易会)は、5月、10月に行われる展示会とは同じ会場であるものの、例年、参加者はそれほど多くはありません。展示会には、多くのデベロッパーが参加し、自社の開発マンションなどを展示し、来場者に販売します。参加者は、気に入った物件があれば、デバロッパーが準備しているバスに乗り、物件を見に行くこともできます。展示会を視察することは、デベロッパーの参加数や来場者数、どんな物件に参加者が興味を持っているのかを直接見ることにより、その時々の不動産業界の状況を知ることができる、非常に良い機会でもあります。
   交易会の参加者は、予想どおり少ないものでした。参加者よりデベロッパーの社員数が多かったと書いている新聞もあったほどです。
   今回の参加デベロッパーの販売方法で特徴的だったのは、定価の5%前後の値引きをして販売(優遇販売)している会社が多かったことです。値引きなどの優遇販売は、交易会が開催されている3日間限定であることが多い為、今回、優遇販売を目当てに来場した人も多かったものと思われます。優遇販売としては、ほかに、「2房変3房」(2LDKを買えばもう1部屋をサービスし、3LDKになる。要は、3LDKを、2LDKを購入するのと同様の価格で購入できる、という意味です)などといって、見かけ上の販売単価は下げないものの、実質的に値引きを行っている物件も散見されました。この手の物件には、市の中心部から地下鉄で30分程度以上かかるエリア(上海の郊外エリア)に所在するものが多く見受けられました。2008年の秋頃から始まった前回の価格調整時には、優遇販売として、部屋を買えば車がプレゼントされるというものや、5%のみならず20%以上値下げするデベロッパーも少なくなかったことから考えると、現在は、派手な優遇販売は行われず、デベロッパーも比較的冷静であるといえます。デベロッパーがまだ冷静でいられるのは、2009年には全般的に販売が好調であったために資金繰りにも余裕があるからなのかもしれません。逆に、今の段階で大きく値下げしている企業は、資金繰りに不安を抱いているともいえるかもしれません。
今後の不動産価格の見通し
   現状では、販売価格はそれほど下がっていないものの、成約量は大幅に減っています。これは、資金繰りに窮しない多くのデベロッパーが大幅な値下げをしてまで売りたくないと考えているのに対し、消費者は、価格が下がる(調整が続く)可能性があり現在は様子を見たいと考えているからと思われます。現在購入を考えているのは、投資目的ではなく、実需で部屋が必要な方達が中心であるといえます。実需の代表的な例としてこちらでよく言われるのが、首套房(部屋の一次取得)、婚房(結婚に備えて購入する部屋。上海では、結婚前に部屋を購入するのが一般的です。これまで、部屋を持つことができるほどの経済力がない男性は、結婚するのはまだ早いと考えられてきました)、学区房(子供を良い学校に入学させる為に、良い学校がある学区内で購入する部屋)などです。
こう考えると、これから1、2ケ月間は膠着状態は続き、価格もあまり下がらない可能性は低くはないのではないでしょうか?
   現在とあまり変わらない(思うように販売価格が下がらない)状況が続いたとき、政府が、次に、いつ、どういう手を打つのかは非常に興味深いところです。

上海賃貸よくある質問をまとめました

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