【トップに迫る 上場企業の成長戦略】
中国人投資家向け不動産販売事業に着手 旅行会社と提携し確度の高い集客見込む
「月に一回程度は中国に出張します。本社のある福岡と、現地法人のある上海までは飛行機でおよそ一時間半。東京に行くのと同じか、それよりも身近な感覚で、思いたったらすぐに飛び立ちます」とシノケングループ(福岡県福岡市)の篠原英明社長は中国の可能性に注目し、事業展開に熱を入れる。必要とあればすぐに渡航できるように、パスポートを常に持ち歩いている。
日本に常駐スタッフを置き、中国人向けに物件の販売を行う同社だが、中国との縁は1998年にまでさかのぼる。シノケンの主力事業である投資用アパートに置く住宅設備の生産拠点を求めたのがきっかけだった。その後、不動産価格の上昇を受け中国不動産への投資がブームとなった2006年に香港企業に出資するなど、資本出資を通じて中国で足固めを行う。
その後、2009年には上海の不動産会社を100%子会社化。上海のメーン通り沿いのビルに店舗を構え、中国人投資家に日本の不動産仲介事業を開始した。
生産拠点としての足場固めが第一、日本人富裕層への中国不動産紹介が第二の波とすれば、同社の対中ビジネスは第三フェーズに入ったといえるだろう。中国の経済成長による富裕層の増加と国内のバブルに対するリスクヘッジの要請を背景にした日本の不動産投資ブームだ。今年8月には中国上海の旅行会社と業務提携し、中国人富裕層向けに日本の不動産を仲介する旅行ツアーなどの事業を開始すると発表し、業界を賑わせた。篠原社長は、中国人投資家向けに日本の不動産販売事業を立ち上げるにあたり、手探りで準備を進めてきたことを明かす。
「モデルケースとして1年間、中国に住む中国人に日本の物件を買ってもらい、取得から売却までの一連の流れに必要な手続きを確認しました」
中国人が日本の物件を取得した場合の登記、税務処理、売却時の手続きなど、一連の業務を通して行ったことでノウハウを身につけることができたという。
今後は、業務提携した上海の旅行会社と連携し、中国人富裕層への日本の不動産紹介業を本格化していく。来日前に中国現地で各個人の予算などをリサーチし、日本に来た時に紹介する物件の種類や規模を絞り込む。現状では、日本で紹介する物件は自社の開発物件ではなく、一般に流通している売買物件の紹介が中心だという。今年の販売目標は売上高5億円以上だ。
目先の不動産販売だけではない。篠原社長は、優秀な人材を発掘する場としても中国に期待している。
「今は、語学力を含めて優秀な中国の人材を発掘するチャンス。不動産販売の規模拡大に合わせて、中国現地で採用し、日本で勤務する人材を増やすことも検討しています」
足元では、主力事業の投資用新築アパートの業績が好調。不況のあおりを受けて年金や将来に不安を抱くサラリーマンからの需要を受け、今年12月期第2四半期連結会計期の業績では、2月に公表した売り上げ計画70億円を大幅に上回る87億1200万円を達成した。販売計画も164戸に対し、216戸と堅調に推移している。
好調なメーン事業で底堅さを見せる同社。中国ビジネスも主力事業として台頭させることが出来るか、篠原社長の挑戦は続く。