雑誌【不動産鑑定6月号】に弊社の不動産鑑定士の記事が掲載されています!!

15 芝田 優巳(しばた ゆうじ)
㈱シノケングループ 経営企画部 海外事業室 課長。
不動産鑑定士、税理士。上海在任歴4年。
早稲田大学大学院商学研究科修了。
野村不動産㈱でオフィスリーシング、都市開発コンサルティングなど、あおぞら銀行(旧日本債権信用銀行)で不動産鑑定評価、不動産投資分析、企業財務分析などを行った後、2006年から上海で中国不動産ビジネスに関わる。
中国では、不動産コンサルティング会社で不動産市場調査、鑑定評価、不動産投資コンサルティング業務、JVのアレンジメントなどを経験。昨年、㈱シノケングループに入社し、中国不動産投資コンサルティングなどを行う一方、中国人向け日本不動産投資コンサルティング業務も行うなど、現在は、日中両国の不動産ビジネスに携わっている。(記事に関するお問い合わせ、感想、取り上げて欲しい話題、中国ビジネスに関するお問い合わせなど、y-shibata@shinoken.co.jp までご自由にご連絡ください)

上海通信6月号記事

今回から、万博開催を間近に控え、より活気付く上海から、上海の不動産に関するレポートをお伝え致します。
成長が続く中国、とりわけ上海を語る上で欠かせないのが、国家級開発区の中でも唯一金融貿易区として指定されている、陸家嘴金融貿易区(以下、「陸家嘴」と略します)です。陸家嘴(Lujiazui)と言ってピンと来ない方でも、森ビルが開発した上海環球金融中心(Shanghai World FinancialCenter)、東方明珠塔(Oriental Pearl Tower、別名「テレビ搭」)があるエリアと言えばお分かりいただける方も多いのではないでしょうか?
上海は、中国経済を牽引する最前線の都市として、1990年代前半から超高層ビルの建設気運が高まり、現在では、20階以上の高層ビルが4,000棟を越える、世界で最も高層ビルが密集する都市となっています。中でも、陸家嘴は、1998年竣工の「金茂大厦」(Jin Mao Building 420.5m)、2008年竣工の「上海環球金融中心」(以下、「SWFC」と言います。492m)など、上海を代表する超高層ビルが建ち並び、銀行・証券会社などの金融機関を中心とし、法律・会計系コンサルティングファーム、シンクタンク、商社など、多国籍企業が集積するエリアとなっています。
中国最高峰となる上海中心大廈
先日、陸家嘴で開発が進む上海中心大廈(Shanghai Tower。以下、「上海中心」と略します)の基礎工事が終えたというNEWSがありました。
上海中心は、階数が128階、高さは632m、延床面積は約56万㎡(内、地下部分は約18万㎡)のオフィスビルで、2014年に竣工が予定されています。上海中心は、前述した金茂大廈の南隣、SWFCの西隣に位置し、完成すれば、3棟で「黄金のトライアングル」を形成することになります。
この上海中心は、世界的な金融危機が進むさなか、内需拡大に力を入れる政府の方針を示す象徴として、総事業費148億元(約2,000億円)をかけ、2008年11月に着工しました。完成すれば中国一の高さを誇る建物の基礎工事をわずか1年足らずで終えてしまうというのは、上海のスピード感に他なりません。おおざっぱな言い方をすれば、中国の工事のスピードは日本の2倍です。これは、中国での工事が24時間体制で行われることも珍しくないからです。24時間体制での作業が、発展する上海を支えていると言っても過言ではありません。上海中心が着工されたのが、SWFCが竣工して間もない時期であった為、ここ上海でも、よく、SWFCに対抗して上海中心が建てられることになったと思われる方も多いようなのですが、実は、1993年年に陸家嘴金融貿易区の構想ができた時には、すでに、3棟の超高層ビルを建てる計画ができあがっていました。つまり、上海中心は、当初から計画されていた3棟目の超高層ビルに他なりません。
上海中心は、アメリカの世界的な設計事務所 ゲンスラー社による設計で、中国のダイナミックな未来を表現する為、昇り竜をイメージしたデザインとなっています。
ゲンスラー社の設計案は、ガラス・カーテンウォールで外側を覆われたビルが螺旋状にねじれながら高くなってゆくという案です。構造は、9つの円柱状の建物が垂直に積み重なり、さらにこれらを二重のガラスのファサードが覆うものになっています。内側のガラス・カーテンウォールが建物を囲み、外側のガラス・カーテンウォールが螺旋状に上昇するように全体を覆うデザインは、まさに昇り竜と言っても良いかもしれません。内側と外側のガラス・カーテンウォールの間には、地表から上層階まで異なる高さに9つのアトリウムがあり、一般市民に開放される予定になっています。また、建物の下層部には商業施設やイベントスペースなどが設けられ、最上部には展望台が設けられる予定になっています。
国務院(中国の最高行政機関。日本の内閣に相当します)は、2020年までに上海市を経済力と人民元の国際的地位に見合った国際金融センターを構築することを提起しています。上海万博後の、上海、中国の経済はどうなってしまうのか?上海万博後は、経済成長に歯止めがかかるのではないか?はたまた、不動産バブルがはじけるのではないか?ということを幾度となく聞かれましたが、上海万博は、あくまでも上海、中国の経済成長の通過点にすぎず、上海、中国の発展はまだまだ続くと考えています。上海を国際金融センターにするという構想提起は、万博開催には飽き足らず、既に先を見据えている(成長を止めない)というメッセージではないでしょうか?上海中心の昇り竜をイメージしたデザインは、上海の発展のシンボルであり、2020年には、上海中心は、国際金融センターとしての上海の中心的役割を担っていることでしょう。
香港のランドマークが上海に登場?
上海中心は、中国の政府系企業による開発ですが、陸家嘴の開発は、外資系デベロッパーの進出にも支えられています。
外資系デベロッパーによる開発の目玉として今話題となっているのが、上海国金中心(Shanghai International Finance Centre。以下、「上海IFC」と略します)です。
上海IFCは、香港で最も高いビル 香港International Finance Centre を開発した、香港最大級のデベロッパー新鴻基地産(SunHung Kai Properties)が開発を進めているプロジェクトです。香港のランドマークと言えるIFCが陸家嘴の中心部(地下鉄2号線「陸家嘴」駅の目の前)にできると言えば、そのインパクトの大きさを想像していただくことができるでしょう。
上海IFCは、高さ260mと250mのツインタワーと、別棟(85m)で構成される、延床面積約40万㎡の複合商業施設で、今年から順次完成する予定になっています。
延床40万㎡の内訳は、オフィス21万㎡、商業施設10万㎡、ホテル9万㎡です。
オフィス部分(全部ではありません)は、HSBCが20フロアーを使用し、中国総本部を置くことになっており、ビル命名権も取得しています。ホテルには、リッツカールトンとWホテルが入居することになっています。商業施設には、高級ブランドが数多く出展すると言われ、上海IFCの隣に位置する上海最大の商業施設正大広場と共に陸家嘴最大の商業エリアを形成することは間違いないでしょう。
芸術作品とも呼べる陸家嘴のオフィスビル
陸家嘴に建ち並ぶオフィスビルは皆個性的なものばかりです。
これも、日本と比べると自己主張の強いお国柄でしょうか?
ただし、これほど個性的なビルが並んでも違和感がなく、むしろ、個性的なビル群を全体として見るとしっくりくるのは私だけではないでしょう。
個性的なオフィスビルの中には、派手さのみが目立つものもありますが、芸術作品とも呼べるようなオフィスビルもあります。それもそのはずで、陸家嘴のオフィスビルは、世界的の著名な設計事務所が設立したものも多く、陸家嘴は、設計技術を競う場ともなっているのです。
SWFCのデザインは、シンプルでもありますが洗練されていると私自身は思うのですが、上海では、「巨大な栓抜き」とも言われています。細長い構造のうえ、最上部に四角い穴がある為、親しみを込めてそう呼ばれています。ちなみに、最上部には、世界で最も高い位置にある展望台があり、オープン以来、大変な人気です。
日系企業などが設計したオフィスビルもあります。
陸家嘴でも一際目立つ中銀大廈(Bank of China Tower、別名「中国銀行ビル」 43階建)や、時代金融中心(OneLujiazui 47階建)は、日建設計が設計したものです。
中銀大廈と言えば、映画ミッション・インポッシブルⅢで、トムクルーズが、隣の浦東発展銀行ビルへと飛び移る名シーンが撮影されたビルでもあります。中銀大廈は、陸家嘴で開発されたオフィスビルがまだ数少なかった2000年に竣工しました。陸家嘴で開発が始って数本目のビルの設計を日系企業が行ったというのは、日本人として誇らしく思えてきます。
また、上海銀行の本社ビルでもある上海銀行大廈(Bankof ShanghaiTower 46階建)は、東京都庁を設計した丹下健三氏が設計したものです。
エントランスは吹き抜けとなっており、ゴージャスな作りは、都庁内のエントランスを彷彿とさせます。外観も、都庁のデザインとどことなく似ています。
上海のオフィスマーケット
これだけの高層ビルが建ち並ぶ、陸家嘴、上海でのオフィスマーケットはどうなっているのか?と興味を持たれる方もいるかと思います。
ここで、上海のオフィスマーケットを見ることにします。
まず、上海市内全体のオフィスマーケットなのですが、昨年度のグレードAオフィスの賃料は下落傾向にありましたが、昨年度の第四半期に下げ止まり、今年に入り、若干上昇しています(図表1)。これは、中国の景気回復傾向が鮮明になるにつれ、金融危機に事業の縮小を図っていた外資系企業が攻勢に転じる動きがあったり、上海への進出企業が増えていることなどが影響しているからであると考えられます。
次に、上海の主要エリアのグレードAオフィスの賃料を見ることにします。図表2では、上海の主要エリア毎の賃料をグラフにしていますが、主要エリアの平均賃料が6.9元/㎡・日であるのに対し、陸家嘴エリアは6.8元/㎡・日となり、平均賃料を下回っています。金茂大廈、SWFCを始め、上海随一のグレードAオフィス集積エリアであるのに何故?と思われるでしょう。
数年前までは、陸家嘴エリアが上海で最も賃料が高く、金融機関など賃料負担能力が極めて高いテナントでしか入居できませんでした。稼働率も高く、オーナーサイドも強気の賃料設定をしており、契約更新時には、オーナーから要求される賃料を払えずに退去せざるを得ないという企業も数多くありました(中国では、日本のような借家人を保護する制度がありません。したがい、貸主が有利で、契約更新時には、貸主は簡単に既存テナントが追い出すことができます)。現在では、陸家嘴エリアに大規模オフィスビルの新規供給が相次いだことから稼働率も低下し、オーナーも賃料を下げてでもテナントを確保に努めている為、賃料相場も下落しました。図表3にあるように、稼働率は、主要エリアで最も低くなっています。ただし、今年に入ってからは、他の主要エリアと同様、賃料水準・稼働率とも若干上昇しています。
陸家嘴の今後のオフィスマーケットはどうなるのでしょうか?
ほぼ間違いなくマーケットが回復し、将来は、再び、上海で最も賃料が高いエリアになると考えられます。陸家嘴は、前述した上海国際金融センター構想の中心部であり、今後も多国籍企業の本部が移転・新設される動きが続くと予想されるからです。政策が決まれば、その政策どおりに物事が進められる-。当たり前と言えば当たり前のことなのでしょうが、ここ中国では、大きい政策ほど、政策が遵守される確率は高くなり、政策が不動産マーケットに与える影響が大きくなります(今年に入り、中国のハワイと言われる海南島を国際的なリゾート地として開発を進めていくと政府が発表して以来、海南島の不動産価格は1ケ月で倍になったというNEWSもありました)。
今後も、国際金融センターを目指して発展を続ける上海から、HOTな情報をお届けしたいと思います。

上海賃貸よくある質問をまとめました

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